Infinity recollection

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丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ (角川スニーカー文庫) [感想]

丘ルトロジック  沈丁花桜のカンタータ (角川スニーカー文庫)

 

 第15回スニーカー大賞 優秀賞

 

 主人公の咲丘は、風景を愛している少年。そんな彼が入学早々に「丘研」の入部案内を見て、この部活は風景を愛している自分にピッタリだと、その字面から入部を決心する。けれど、丘研の正体とはオカルト研究会のことで――。

 

 オカルトという単語から想像される物語として、魔術、UMA、幽霊、などが関わる事件を解決するだとか、その方向で学園生活を送る話を考えていたのだけれど、それとは違う。

 

 非現実なオカルトというよりは、現実に近いオカルトであり、同時にこの物語にオカルトは存在しない。オカルトとは何なのだろうと考えさせる。登場する人たちの個性の強さと、道の踏み外し具合を楽しむ。

 

 そういう意味でも、キャラクターが魅力的だった。

 

 学園オカルトを想像していただけに、それが序盤で良い具合で崩れてくれるので、その展開が新鮮に映ったし、物語が進んでいくごとに登場人物の本性が見えてくる構造になっているのが面白い。

 

 気付いてみれば、周りには狂気が溢れていた。読み始めたときには、少し変わった部活で変わった学園生活を過ごしていく流れがあるのだけれど、読み終わる頃には、その空間の歪さが際立つ。読み手の視点が変わったことで、印象が変化する。

 

 特に、江西陀は可愛らしかった。彼女自身もかなり狂っているのだけれど、学園での言動が良い。主人公との掛け合いもそうだけれど、ピロートークでコミュニケーションをとってみたりする。そして鼻血を出す萩先輩。この流れが楽しかった。

 

 萩先輩はその手の話は苦手で、会話に加わろうとはしないのだけれど、気付くと鼻血を出している。主人公に対する仕草も良くて、応援したくなってしまいました。

 

 面白かった。物語の印象が変わっていく部分と、キャラクターで読ませる面白さ、楽しませてもらいました。

 

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