羽月莉音の帝国 5 (ガガガ文庫) [感想]
銀行を買収したはいいけれど、恒太が頭取に就任して大騒ぎな革命部。ただでさえ経営が不透明な日本商業銀行を再生させなければならないのに、更にリスクを背負い込むことに。
終始、恒太が大活躍。
恒太の行動に最初は大反対の面々だったのだけれど、どちらにしても前に進むしかなくて。恒太の大胆な発言に、感化される人達があらわれ始める。結果として銀行にはお金が集まるのだが、これがまた首を絞めることに。
つまりは、金利が払えない。銀行は動かせるお金が規定されているわけだけれど、その中で利益を出していかないと金利分だけ赤字になってしまう。お金は集まるのにお金が足りないという、当たり前であり面白い状況に。
エンテーテイナーとしての恒太の行動が興味深い。
そもそも恒太の行動がこれまで作品中での出来事のまとめのような位置づけになっていて、言動は恒太流で独特だけれど、情報操作などを上手く活用している姿は過去の巳継やじいさんの様。
これに騙されていく国民がまさに読み手たちなのかしらと考えつつ、恒太に騙されるという図が既に面白いですし、これが日本の選挙の結果とも繋がっていて納得。
また、終盤には証券化にまつわる流れから、中国の歴史を追いつつ経済を読ませてくれる。どのように今の中国が出来上がっていったのか、確認しつつ読ませてもらった。中国と台湾のあり方は面白いので読んで欲しい。
中国の政治と日本の政治の違いにも言及しているのはポイント。
ただ、一貫して銀行再建だったので残念という気持ちもある。事業の規模は拡大しているのに、金銭感覚が麻痺しているから、物足りなさを感じてしまうという読み手も良く分からない状況に。
面白かった。
Presented by Minai.
- 作者: 至道流星
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/12/17
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る