ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫) [感想]
――こんなの伊織じゃない。
太一が伊織に告白するところから物語は始まる。これまでで二人が両想いであることは分かっているので、素直に付き合い始めるのかと思いきや、何故だか太一はフラれる。そこからというもの、伊織の態度は変わり始める。
感情伝導という現象が5人の関係を掻き乱す。
アトランダムに自分の感情が誰かに伝わってしまうこの現象で、お互いに疑心暗鬼になり、とりわけ伊織という女の子が分からなくなってしまう。稲葉などはどうして太一がフラれたのか混乱し、太一は当然に落ち込んでいるし、伊織はクラスで浮き始める。
伊織のための話であり、稲葉のための話。
今回は現象を解明したり、ふうせんかずらと衝突したりで5人が乗り越えていくというよりは、伊織が先に進む話で、その過程で稲葉と太一が成長していく話になっていた。
伊織の感情が爆発してからの叫びは、そのまま読み手の気持ちにも映って良い。ふうせんかずらって何なんだ、そもそもこんな現象が起こったら怖い、今まで平然と乗り越えてこれたことが普通じゃない。
これまで起こった現象の数々は自分自信の否定にも映るし、伊織は酷い目にあっている分を含めて一番影響を受けていた。――それでも突っ走っていくのは青春なのかな。
伊織の絶叫を受けてから、稲葉がそれを知るかと吹き飛ばす。
バランスや普通に固執するあまり、そこからどんどん乖離していった伊織。だから極端に明るい伊織と暗い伊織が生まれてしまって、それを自分が受け入れられないどころか、自分が分からなくなってしまう。
太一と稲葉と向き合って言い合うことで、伊織の視点が変化できたし、伊織が伊織を理解出来た、もしくは理解できる気がしてきた瞬間がそこにはあって、何かそういうのいいなと思えた。
面白かった。続きも期待しています。
Presented by Minai.
- 作者: 庵田定夏,白身魚
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2011/01/29
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 60回
- この商品を含むブログ (38件) を見る