サマー/タイム/トラベラー 〈1〉 (ハヤカワ文庫JA) [感想]
上巻。
実は読み終わるまで上下巻だということに気がつかなかった。タイトルに(1)と明記されているにも関わらずだ。そんなわけなので、続きを購入していない。失敗だ。これを書き終わったら直ぐに書店に足を運んでみるつもりではあるが、置いてあるだろうか……。
さて、上巻では主人公達が選択していった行動の結果として、ある事件に繋がることが冒頭から示唆される。このとき注意していれば、そこまで考えていなかったなど、ことあるごとに登場するのだけれど上巻でその中身は明かされない。
読み手側は事件を期待して読むと思うが、それを上手く交わすが如く、高校生たちのちょっとSFな夏休みが進行していく。一人の女の子が時間を跳べるようになり、それがどういうことなのか考察する。それ以外は至って日常。
いつものように喫茶店に集まって話し合うだけ――けれど、飽きさせない。
文章は独特なので読み難さもあるが、主人公の語り口が変に冷静で斜に構えているように映るので、物語のワクワクさせる夏と反発していて妙に印象に残り面白い。引きこまれるというよりは、地面をゆっくりと引きづられていくように読んでしまう。
また、作中で登場人物たちが考察していくSF系、タイムトラベル系の小説の数々がとても読みたくなる。そういう意味では、これ一冊を読めばタイムトラベル系の本で有名なものは何があるのか示してくれるので、読書に広がりを出す資料としても出来が良いのではないだろうか。
高校生たちの行動や台詞から、高校生らしさが読める。彼らは頭が良いからこそ、回り道しながら青春しているのかもしれない。面白かった。
Presented by Minai.
- 作者: 新城カズマ,鶴田謙二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/06/16
- メディア: 文庫
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