Infinity recollection

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ソードアート・オンライン〈7〉マザーズ・ロザリオ (電撃文庫) [感想]

ソードアート・オンライン〈7〉マザーズ・ロザリオ (電撃文庫)

 

仮想と現実の繋がりをより色濃く印象付けられた。

 

作品として仮想と現実の希薄さというのはこれまでも語られてきて、仮想が現実になったときの恐怖も語られてきたけれども、その二つの要素について違うアプローチで向き合っていた様に映った。

 

キリト視点で物語を語るのではなく、アスナ視点で語る。

 

仮想でも現実でもキリトの立ち位置というのは特殊であって、個人的にどこか地に足着いてない雰囲気を持ちながら、内面は一本芯が通っている。誰をも自分の空間に引き込んでしまう魅力がある。

 

一方のアスナは仮想世界では常に気丈に優雅に振舞いながらも、現実では鎖に縛られるように自由がない。そんな彼女がユウキと出会うことで、キリトにも言えない弱音を吐露していく。それはアスナが誰よりも小さく弱く見えた瞬間で。アスナがユウキと自分を重ね合わせていたからこその弱音だったのかもしれません。

 

アスナ視点で語られるとこうも物語の印象が変わるのかと、驚きでしたし楽しませてもらいました。最終的に今まで逃げていたことに向き合っていく、どこか諦めていたことを説得するという流れも綺麗。

 

スリーピングナイツ。

 

ユウキのギルド「スリーピングナイツ」の秘密が明かされたとき、思わず涙がこみ上げてくる。キリトの口ぶりからある程度は予想していたとはいえ、それの更に上を持ってくるのだから衝撃が走る。

 

読んでいて達成感を感じるというものおかしな話だが、ALO中のプレイヤーから見送られていく展開にはどうしようもなく揺さぶられて涙が止まらない。読んだあとも余韻が心地よくて、感想を書こうとすると泣けてくるのだから読み手に与えた衝撃は強烈だった。単純に凄いなこの作品と思わされた。様々な方向から心を刺される。

 

医療分野へのVR技術の広がりと、仮想と現実の繋がりをユウキに教えられた様でした。いなくなった人だとしても、誰かが覚えていてくれれば永遠にいなくなったことにはない。本当にそうだと、しみじみ思う。

 

間違いなく絶剣は伝説として語り継がれていくでしょうし、語り継いでいって欲しい。

 

誰よりも仮想世界を楽しんでいたユウキの笑顔には、ALOで体験したことが無駄ではないことを物語っている。キャラクター全員がマザーズ・ロザリオを通して何かを得ているし、読み手も何かを得ているはずで。それは無くしてはいけないかけがえのないもの。

 

エンターテインメントは忘れず、静謐な空気と辛さ、何よりも明るさと輝きを秘めた、いつもとは少し雰囲気の違う物語でした。マザーズ・ロザリオが読めて良かったですし、全てが完璧で気持ちよかった。これは、最高傑作だ。

 

 Presented by Minai.