Infinity recollection

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グロリアスハーツ (富士見ファンタジア文庫) [感想]

グロリアスハーツ (富士見ファンタジア文庫)

 

派手さのない変わりに、物語で魅せてくれるタイプのファンタジー。

 

バトルも確かにあるし、その戦闘描写は能力合わせて格好良いが、物語の核となってくるところは一人の少女にある。彼女、メリッサの存在を回想しながら大切に描いていくことで、ファンタジーとしての世界観と話に深さが出ていた。

 

贋人(ギニョル)と人間。

 

兵器として作られた存在の贋人の少女と、人間でありながら贋人のような能力を持ってしまった少年の旅は、明るく振舞いコミカルではあるが、やはり悲壮感みたいなものが漂っている。それこそユズカが能力を発動しているかのように、どこか冷たい。

 

だかこそ、運送屋をやっているときの二人と、願いを叶えるために奔走しているときの二人の差が面白い。

 

自然とメリッサのことが知りたくなる作りになっているので、物語に引き込まれていくのだが、それが気持ち良い。文章にしてもそうだけれど、登場人物や描く事柄に台詞とバランスがとても良いので、テンポを損なうことがない。

 

また、キャラクター性という意味でも考えられていて、ヒロインとなるユズカがとにかく可愛らしい。無表情の感情が薄いタイプの女の子が、ときたま魅せる赤い顔。恥ずかしさを堪えているの姿に悶える。アルトゥールはアルトゥールでどうしようもないシスコンのくせに、鈍感なので読んでいてやきもき感が半端ではない。そんな二人の距離感が読んでいて心地よい。

 

ファンタジーというと、王道である英雄譚を想像しがちだが、こちらの物語も確かに王道には違いがない。久しぶりにジャンルはファンタジーでも、引き込むタイプの面白いシリアスファンタジーだ。この作品には期待してもいい、というか期待したい。

 

面白かった。続きが楽しみです。

 

 Presented by Minai.

グロリアスハーツ (富士見ファンタジア文庫)

グロリアスハーツ (富士見ファンタジア文庫)