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俺の妹がこんなに可愛いわけがない(11) (電撃文庫) [感想]

俺の妹がこんなに可愛いわけがない(11) (電撃文庫)

回想編。

 

京介が思いのほか熱くて痛々しい……。本当に同一人物なのかと思えるほどに熱いバカ。クラス委員だからと皆のお節介を焼き、悩み事を解決するために奔走する。高校生の京介はクラスで目立たないけれど、中学生の京介は良い意味でも悪い意味でも目立っている。

 

物語はそんな彼が今の性格に至った経緯が描かれます。

 

トラウマともいえるのかもしれませんが、京介が頑張って挫折して、周囲がどのような受け取り方をしたのか。兄妹の冷戦突入の切欠となった出来事です。これは読んでいてキツイ……。

 

麻奈美の印象が一気に変わる話でもありますし、キャラクターの立ち位置や設定が良い意味で壊される話でもある。最終巻に向って舵をとっているのが分かって感慨深いけれど、それらはこれまでの物語を読んでいるから出来ることで、勇気のいる作業なのではないかしら。読み手としても先の展開に緊張して、終始気が気ではなかった。

 

新キャラクターの秋美の明るさには救われた。物語が回想であり基本的に暗い話を掘り起こそうとしているので、京介たちのテンションは低い。そんな中で、回想での秋美の自由人ぶりと独特な台詞まわしに程よく力が抜けた。

 

そのダメ人間ぶりに笑わせてもらったし、バカなのか聡いのか良く分からないところがこれまた可愛い。何だかんだで京介に付き合ってくれたのは、本人も思うところがあったからじゃないのかな。深く描かれないからこそ、考えると面白い、

 

また、登場人物としての立ち位置もメインキャラクターを霞ませるわけではなく、あくまで脇役として輝かせる描き方をしていて、その辺りのバランス感覚は絶妙。引くところも見事でした。

 

ついに次は最終巻ですので、京介が誰を選んで終わるのか、京介と桐乃は兄妹に戻れるのか。想像が膨らみます。

 

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