Infinity recollection

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黒鎖姫のフローリカ (富士見ファンタジア文庫) [感想]

黒鎖姫のフローリカ (富士見ファンタジア文庫)

 

落胤(フォーキィー)どもの騒がしいこと騒がしいこと。

 

主人公が序盤で死ぬという衝撃的な展開から物語が始まっていくのだが、あとがきにもある通りほぼ屋内で進行していくお話は、シリアスなのにテンションが高くコミカルテイスト。故に読んでいて、アメコミのような雰囲気を感じる。

 

例えば死んだ主人公が現実を受け入れていく過程。例えば落胤どもが殺し合いをする宴に放りこまれる主人公。理不尽でシリアスな展開は読み手まで気分が暗くなるものだが、落胤どもが騒がしいせいでそれを感じる暇がな。いや感じるのだけれど、落ち込みきる前に楽しくしてくれる。そのバランスが素晴らしい。

 

特に面白かったのは猫さん。早口言葉のような長台詞に、皮肉とユーモアを含ませるセンス。つかみどころなくスタッグを翻弄しつつも、読者を含めて世界を案内してくれる。変身できる強みを生かした言動がとにかく面白い。

 

フローリカの印象の変化にも注目。

 

これがまた重要で、序盤でのフローリカの言い分は主人公のスタッグにとって受け入れ難いものであるし、高圧的で我侭な台詞には、内心腹立たしく感じるのも致し方ないように映る。けれども、フローリカの過去や生い立ちが周囲のキャラクターから語られることで印象が軟化すると共に、スタッグに恋愛感情めいたものを抱き始めたあとの彼女は魅力的。

 

ふとした場面でこぼれる台詞が可愛いのだ。地の文から読み取れる雰囲気と、笑顔は反則だろう。

 

素晴らしいのは全体的にまとまっているということ。構成からキャラクターの配置、世界観と読んでいて違和感がなく心地よい。自然に流れるように文章を飲み下せるというのは、当たり前なのだろうけれど価値がある。面白かった。続きにも期待しています。

 

 Presented by Minai.

黒鎖姫のフローリカ (富士見ファンタジア文庫)

黒鎖姫のフローリカ (富士見ファンタジア文庫)