ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニング (電撃文庫) [感想]
人として守らなければいけないものとは――。
無事に上級修剣士になったキリトとユージオ。彼らにもロニエとティーゼという傍付きができ、このまま学園生活で切磋琢磨しながら大会を目指すのかと思いきや、一気に圧縮してきたその手腕が素晴らしい。物足りないものになることは一切なく、より続きが気になる深みに案内してくれました。
これまで善性溢れる素晴らしい世界だと考えていたものが、一気に崩壊した。これまでも貴族と平民やら身分から生まれる違和感や志向性の違いはあったけれど、ここまで露骨に陰湿な手段でくるアンダーワールド人がいるのかと。
ノブレス・オブリージュ――力あるものの義務はどこにいったのか。醜悪に彩られた思考と粘着質な台詞から這い出てくる人間の汚さを見た。ある意味で人間の本質なのかもしれないけれど、けして越えてはいけない。
逆にユージオがシステムアラートを乗り越えて大切なモノを守る場面は印象的でした。仲間を守るだけではなくて、限界を超えられなければユージオの全てを失ったでしょう。アンダーワールド人として壁を越えましたし、人間としての尊厳を守った。いや、人間に近づいたというべきなのでしょうか。それでこそ美しい。けれど、キリトが投げかける言葉からは結果として……という思いもあるはずで、闘争とは真理なのですかね。
物語は基本的にユージオの一人称と言いますか、心理描写が多いので、感情の機敏な変化を感じ取れるところろは流石に上手い。それがあるからこそ、全ての場面が見せ場になる。
さて、カーディナルの登場でも度肝抜かれて、世界観の説明に驚愕しきりなのだけれど、どうなることやら。続きも期待しております。
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ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニング (電撃文庫)
- 作者: 川原礫,abec
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2012/12/08
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