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斉藤アリスは有害です。 ~世界の行方を握る少女~ (電撃文庫) [感想]

斉藤アリスは有害です。 ~世界の行方を握る少女~ (電撃文庫)

 

この読み味は、久しぶりだ。これは面白い。

 

タイトルとあらすじから避けてしまった人も多いのではないだろうか。斉藤アリスを秘密を探るために近づく山野上秀明、秘密を知ってしまって――と言われるとよくあるラブコメかと思う。確かにラブコメではあるのだけれど、米軍、エリア51、日本政府までまたにかけて展開されていく物語とは思わなかった。

 

人類史上初めて有害者認定された斉藤アリスは、愛体に言えば社会の厄介者。通う学校でも恐れられて友達ゼロ。そもそも、近づくと不幸にさせられるし、前例が枚挙に暇がないとなれば、好き好んでお近づきになろうという人間はいない。陰口をたたかれ煙たがられる姿は真に痛々しい。これまで学校に通っているのが不思議なくらいに心が痛くなる扱いを受けている。それも法律で人権を認めないことを明言されてしまっているから、さらに救えない。

 

ミステリアスでオカルトチックなボーイミーツガールは全世界を巻き込んでいく。

 

そんな中でアリスに興味を抱いて近づくのが山野上秀明なのだから、序盤から何が起こるか高揚感が半端ではなかった。事実、その期待を裏切らない物語の構成に、登場人物たちの志向と性格。張った伏線を回収しながら進めていくのも丁寧だなと。

 

物語では秀明がアリスに近づいたところから、有害者も不幸ばかりを運ぶわけではないと周知することで友達らしきものが出来始める日常パートと、そこからのセカイ系を髣髴とさせるシリアスパートとに分かれるが、この落差が素晴らしい。

 

魅力はそのキャラクターだろう。まず、ヒロインのアリスだろうか。控えめな性格から、言葉は少ないが、打ち解けた本当の性格は明るく愛らしく可愛らしい。何よりテンパったときにペンギンになってしまうという表現が良い。一種、哀願動物のような、台詞一つとっても可愛らしさを意識しているのだなと感じられる。

 

主人公の秀明も良い。常に冷静で科学を信じオカルトを信じない彼は、自らの価値観でしか行動しないので冷徹にも見えるのだけれど、氷のような彼が感情をあらわに叫ぶ姿は印象的で、この手の作品の醍醐味だろう。加えて、地の文の読み心地が合っているのか、彼の一人称はストレスなく読み込めた。

 

登場するキャラクターにそれぞれ役割があり、全員がでしゃばらずに役をこなす。脇役たちの配置も良く出来ているし、コミカルテイストに振るところは振って、シリアスに締めるところを締めるのは見事という他ない。何より、暗い設定を使っているのに、良い奴しかいないって、こっちが胸が熱くなる。ご都合主義といわれようが、楽しい方がいいに決まっている。

 

章ごとに挟まれる滅亡へのカウントダウン。その先に何が待っているのか、是非とも読んでもらいたい一冊。

 

 Presented by Minai.