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エーコと【トオル】と部活の時間。 (電撃文庫) [感想]

エーコと【トオル】と部活の時間。 (電撃文庫)

 

第19回電撃小説大賞 金賞受賞作

 

オカルトな雰囲気を漂わせながらも、描かれるのは化学部の日常系ミステリー。喋る人体模型【トオル】と、冷静に淡々としたエーコの奇妙なやり取りが面白い。エーコの一人称で語られる物語は読みやすいので、二人の会話劇が際立ち、引き込まれる。

 

日常系でも、ダークでオカルトなミステリーであり、且つ青春小説。

 

明らかに日常だろう。化学部の日常なのだろうが、少しばかりズレた日常だ。ほのぼのミステリーを期待しているのなら止めておいたほうがいい。本作は淡々としたエーコの語りに一瞬だけ騙されそうになるが、かなりシリアスな背景を持っている。

 

いわゆる一つのイジメ問題なわけだけれど、エーコがいじめられていた過去と浮いてしまった現在が作中で語られることで、ミステリーだけれどその枠に収まらない青春小説の体を成している。むしろエーコという少女の考え方や事件から提供される雰囲気をキャラクターを通して味わうことが主題かもしれない。

 

故に、ミステリーも化学を上手く使いながら、ヒントを与えることで推理は簡単に出来るし、人体自然発火現象を巻き起こした真犯人も分かりやすい構造となっている。作中の事件を通してエーコもそうだけれど、読み手がどう考えるのかが重要な作品で、どこか問いかけられているような読後感は嫌いではない。

 

うーむ、感想を書けば書くほどミステリーじゃないような気がしてきましたが、どうなのでしょうね。これは青春小説として勧めるべきでしょうか……。何にしても、登場人物たちは個性的で良く出来ているし、お話の完成度も高い。派手ではないから評価が分かれそうではありますが、金賞受賞を納得させる出来栄えなのではないでしょうか。面白かった。

 

 Presented by Minai.

エーコと【トオル】と部活の時間。 (電撃文庫)

エーコと【トオル】と部活の時間。 (電撃文庫)