Infinity recollection

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聖剣の姫と神盟騎士団I (角川スニーカー文庫) [感想]

聖剣の姫と神盟騎士団I (角川スニーカー文庫)

 

杉原智則さんの新作ということで購入。

 

また著者のファンタジー戦記が読めるということで嬉しいです。前作からの印象で、シリアスで硬派な設定やキャラクターを配置するのかと思っていたのだけれど。一転して個性的な登場人物ばかりだ。中でも面白いのは、主人公ダークが一番怪しいということ。

 

読めばニュアンスも伝わるのだが、小者の雑魚敵な雰囲気が漂うばかりか、英雄への憧れがありすぎて妄想癖があり、台詞も舞台キャラクターのような仰々しい言葉を使ったりする。そしてとにかく卑怯。卑怯な英雄というのも珍しいのではないだろうか。

 

正式には、これから英雄になるであろう男の物語なのだろうけれど、口先ばかりで戦わないし逃げるし、戦略とか知略があるわけでもなく、とにかく凄い主人公です。それでも、戦場で生き残るのはダークみたいなに用心深く、悪運の強さも必要なのかなと思わされる。

 

己の器を知っているからこそ、無理はしない。

 

周囲のキャラクターが最強を地で行っているので、バランスは取れていると思います。相棒のフィーネはダークとは対照的に生真面目で一途で、騎士のような女の子なので、そこにダークの悪知恵が加わることで展開が面白い。読み手は、フィーネがダークへと抱く卑怯だという感想と、物事の本質を見透かしたような言動を取る部分での、傑物なのかもという曖昧さでしかダークを捉えられない。何ともつかみどころがない奴です。

 

物語では聖剣団の建て直しが描かれていくのだけれど、シリーズ序盤だというのにフィーネとダーク以外は敵だらけに見えてしまって四面楚歌に映るのは読み手だけだろうか。正直、ここからどうなるのか予想がつかない。自由に動かせそうなキャラクターは多いですし、設定も世界観もしっかりしているので、どこに振っても面白くなると期待させる。

 

また発売まで楽しみなシリーズが増えた。

 

 Presented by Minai.