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アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者6 (講談社ラノベ文庫) [感想]

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者6 (講談社ラノベ文庫)

 

ミュセル。君は僕の心の清涼剤だよ。

 

作品の雰囲気を一気に変えてしまうのは流石ですね。いっそ美しいくらいに展開に無駄がない。慎一の補佐役、もといライバルとして光流という新キャラクターが登場するわけだけれど、表と裏、白と黒、オタクとして真逆の対比が非常に面白かった。

 

光流は日本政府の意向に沿って、資本主義的な商業ベースでオタク文化を普及させようとするので、漫画やアニメやゲームはまず楽しくあるべきとする慎一と考え方が異なる。売れた作品、売れる商品こそ全てで、売れれば強引な手段を使っても構わないとする光流の行動は危うい。

 

商業的に成功すると見込んで試験導入したトレーディングカードゲームとエロゲによって中毒者まで現れ始めて、やっと慎一も事態の深刻さに気付くのだけれど、異世界の異文化交流を優先させるのが正しいのか、目に見える成果を求めるべきなのかで、慎一自身が迷っている姿は何とも歯痒いですね。

 

光流にしろ慎一にしろ、どちらも正しいことを言っているので、物事が歪曲していく様がもどかしく感じる。加えて、慎一には自分が用済みになるのではないかという不安もあるので、これも物語をややこしくしています。彼の中では八方塞の四面楚歌に映っているでしょうから、そんな中でのミュセルの存在は大きい。

 

今回も可愛いよミュセル。ミュセルは可愛い。

 

物語を通して、明確な敵や悪をその他の端役にもっていったのは好感が持てました。慎一も真っ向からそれは駄目だと否定するわけではないから、光流の立ち位置が生きてくる。今後はずるい大人の的場さんが何を企んでいるのかは気になるところではありますが、子供であった光流と慎一にはこのままの距離感でオタク文化を発信していって欲しいものです。

 

 Presented by Minai.