Infinity recollection

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サマー・ランサー (メディアワークス文庫) [感想]

サマー・ランサー (メディアワークス文庫)

 

ひたすら一直線な槍になれ。

 

これは面白かった。スポーツを題材とした作品は忘れた頃にやってきて、その度に心を鷲づかみにされている気がするけれど、やはりマイナージャンルなのでしょうね。この手の作品はもっと読みたいけれど、ファンタジーやラブコメみたいにシリーズにするのは難しいですし、シリーズにするなら違う要素を入れ込むしかないですものね。

 

さて、本作は架空の競技である槍道に魅せられた少年少女たち青春を描いている。この槍道というのが、架空の競技ながら熱い。剣道と薙刀をあわせたような、読んでいて想像した動きはフェンシングにも近いようなスポーツが槍道と言えばいいだろうか。

 

挫折を味わう物語。

 

剣道に絶望してキラキラできなくなった主人公のテンジ。剣道では神童とすら呼ばれていたのに、年齢が上がるごとに、優勝は準優勝になり、ベスト8になりと成績が振るわない。どうすればいいのか分からない。剣道をしていても楽しくない。

 

親が転勤ばかりで、一つの学校に留まれる期間が少ないというのも、これまで通った全ての学校で剣道部から孤立する結果を生んでしまっていて。転校生がいきなりレギュラーを勝ち取っていくのだから、陰口も叩かれるというもの。転向して友達と上手くいかなくて、剣道が楽しくなくなっていく。転向すれば友達関係はリセットされるが、テンジの心まではリセットできるわけじゃない。

 

作中ではとにかくテンジが挫折していく。心を折られている。それをまっすぐにしていくのが槍道であり、槍道部の面々であり、槍道少女の羽山里佳。うじうじ、逃避、はっきりしない。主人公のテンジにはやきもきさせられますし、展開のさせ方に違和感がある部分もあるけれど、剣から槍に持ちかえる決意をするテンジは見ものだ。

 

試合風景もまさに暑い夏そのもので、槍が打ち合う音、床がきしむ音、蝉の声まで聞こえてきそうで心地よい。凝縮された4分間の戦いは熱すぎる。

 

 Presented by Minai.