Infinity recollection

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ロストウィッチ・ブライドマジカル (電撃文庫) [感想]

ロストウィッチ・ブライドマジカル (電撃文庫)

 

藤原祐さんの新作。

 

登場人物たちは魔法少女のはずなのに、著者が描くそれらは、ダークで容赦なくおどろおどろしい。魔法の国の女王のための統合戦争に巻き込まれてしまった少女たちを主軸に、生き残りをかけての壮絶な殺し合い(絶望)と、一つの可能性としての未来(希望)が描かれる。

 

力を得るためには代償が必要であるではないけれど、万能の願望器でもないけれど、願いを一つ叶えたら契約でもないけれど、つまりはそういうお話。魔法少女になるということは罪を背負うということ――。

 

望んでもいないのに、生まれたときから異能の力を持っていて、魔法の国の住人からはお前は器の欠片を持った魔女なので、他の魔女から器の欠片を奪えと理不尽にも命令される。最初は殺し合いをするのはおかしいと考えていた魔女たちも、逸脱した者が現れれば、疑心暗鬼から殺される前に殺すというのが常識になっていくのは当たり前なのかもしれません。

 

登場人物たちが中学生というのも、この暗く鬱々とした世界観には合っていて、つまりは倫理観が完全に構築される前から、生き死にを突きつけられているわけだから、歪んだ感情や思考の果てに倫理観が変化していてもおかしくはない。

 

主人公の水奈は、そんな殺伐とした非日常の現実から、一貫して殺し合いはいけないと甘い理想論を語る女の子。けれど、彼女には己の理想を貫くだけの信念と覚悟があるので、惑わされないし皆を救うんだという強い想いが読んでいて眩しかった。

 

水奈という存在が奇跡であるし希望。

 

そんな彼女の周りに集まる魔女たちも、自然と水奈の理想の為に頑張るという強い結束は光り輝いていました。まだ一巻なのでどうなることか分からないけれど、願わくば皆に幸せになって頂きたいところ……、無理かな。

 

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