Infinity recollection

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グランクレスト・アデプト 無色の聖女、蒼炎の剣士 (富士見ファンタジア文庫) [感想]

グランクレスト・アデプト  無色の聖女、蒼炎の剣士 (富士見ファンタジア文庫)

 

混沌が支配する大地を舞台に描かれる、戦記ファンタジーグランクレストの外伝が早くも登場です。MF文庫でも刊行されて、更にコミックなども刊行されると1ヶ月に1冊は関連書籍が発売されるような感じになるのでしょうかね。

 

邪紋使いの物語。

 

今回は聖印を宿した君主たちが混沌を払ったりするのではない。主人公ロイは己に混沌を刻みつけ自ら混沌に近づくことで異能の力を発揮する邪紋使いであり、彼と彼の所属する傭兵団のお話となっている。

 

本編では異常な強さを発揮していた邪紋使いだけれど、謎だらけでした。それが主人公というが何とも外伝らしい。

 

ロイは幼いときに混沌災害に巻き込まれた過去があり、強くなりたいと常に考えそのために生きている少年だ。自分の中でも強くなることが目的になってしまって、何のために強くなるのかに気づけていない。そんな彼が、異世界からやってきたヒロイン真璃と出会うことで、葛藤しながらも目指すものを見つけ成長していくのが読みどころだろう。

 

真璃は混沌の災厄を招く投影体としてやってくるので、死ねば混沌に戻り邪紋を刻むことが出来る。ロイとしても真璃を殺せば簡単に強くなれる。けれど、投影体ではあるがドラゴンやデーモンではなく人間である。けれど、彼女は災厄をもたらす投影体であり、彼女がいるだけで自然率は乱れるはずだ。殺したところで、投影体は異世界の本体のコピーでしかないので、本体には影響がない――剣を握るロイの迷いが人間でした。邪紋使いは化け物のように忌み嫌われるけれど、彼らもけして無感情な人殺しではないのです。

 

現代の女子高生は強い。

 

投影体という設定は本編でも登場しているので想像しやすいけれど、現代の女子高生が召喚というか出現するとは思わなかった。そこもアリなのですね。この真璃も平和な現代人で能天気なので、冷静なロイとの掛け合いが面白い。まあ、相手にされていないとも言えるのだけれど……。

 

現代からやってきた真璃の感性というのは、その時代に生きる人たちとは違うけれど、読み手とは似ているので感情移入はしやすい。そして、彼女は強い。異世界に来てしまうという境遇でありながら弱音を吐かないし、物事の本質を理解しようとする賢い女の子なので、ロイの強さとは違った凛々しい姿が良いのですよね。

 

何気に真璃が現代の料理を作るのを提案していたけれど、料理は楽しいのではないかな。現代のものとかもっと作れたらそれこそ大金持ちだと思う。

 

ロイと真璃の関係を微笑ましく読みながら、油断したところで竜退治から話が加速するので、手に汗握る展開に引き込まれて欲しい。王道のファンタジーの仕上がりです。

 

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