Infinity recollection

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未確認未来少女 (ガガガ文庫) [感想]

未確認未来少女 (ガガガ文庫)

 

文章を読んだときの感覚が美少女ゲームっぽいなと感じました。主人公とヒロインの台詞に対して選択された言葉、脇役の登場の仕方と物語への展開などがそうですが、特に意識させられるのはキャラクターがおどける場面やツッコミを入れる場面など、所謂、コミカルな演出をする部分での台詞。ライトノベルもくだけている表現は使いますが、本作は美少女ゲームのそれでした。感覚的でしかないのかもしれませんが、違和感と言えば違和感。(著者はどうやら主にゲームのシナリオライターさんなのですね。現在放送中のテレビアニメ「トリニティセブン」の原作者というのは知っていたのですが。)そのくだけた表現が日本語としての違和感と認識してしまうと、残りの全ての文章が読み難く感じられてしまうので、美少女ゲームのテキストが合わない人にはオススメしません。かく言う私も苦手ではないにしてもライトノベルを読む頭だったので、切り替えるのに時間がかかりました。

 

内容はとりあえず、幼馴染が可愛らしいです。ことあるごとに求婚や告白じみた言動を取るので、もう結婚してしまいなさい言いたくなる甘さがあり、頬がニマニマと緩んでくるところなど大変よろしいです。正ヒロインは幼馴染ではないわけなのですが、長年連れ添った夫婦のように良き相談者であり理解者であり、通い妻的な甲斐甲斐しさも併せ持っているのに選ばれないのはおかしい。(主人公の弁では外見がロリであることが理由。)――トリニティセブンを知っている方は分かるかと思うのですが、本作についても物語スタート地点からヒロインたちの好感度はマックスといってもいいので、それこそハーレムもの一直線な感じでラブコメは進行されていきます。主人公は同級生よりも少し大人びていて、未来を見る力を持っており、ちょっとエッチだけど草食と、典型的な男の子。ラブコメとしてのキャラクターはしっかり作りこんでいます。

 

ただ、タイトルとなる未確認未来少女が表現するようにSFがテーマの作品ではあるのですが、そのSF要素の部分があっさりし過ぎていると感じました。キャラクターたちとの芝居(ラブコメ)にページを割いているので、シチュエーションと掛け合いで押すタイプの純粋なラブコメを書いているわけではないですから、軸がぶれているように映ります。キャラクターたちから説明されるSF要素、地の文での解説を含めて、どうにも言葉が宙に浮いたまま降りてこない。ラブコメから極端に場面転換されるので、落差についていけずにそう感じるのかもしれませんが、唐突に物語の核となるテーマを言われてもいまいち理解が追いつかないのに加えて、この核となる部分は案外設定が重いわりに説明があっさりなので、重いのか軽いのかよく分からなくなって混乱する。例えるなら、ゲーム序盤の装備でラスボス戦に挑むことになったけれど、案外戦えてるみたいな。(。ヒロインの未来人という設定も終盤だけに関わってくるので、結局は何が言いたいのかよく分からないまま終わってしまってチグハグに感じる。あらすじだけ読めば、未来人との交流を描いていくと読めるのだが(そうではあるのだが)、未来人と出会って”妹を助けるために”頑張る話になっているから、期待した話とはちょっと違うなと。幼馴染の造形には好感が持てただけに残念。

 

ガガガ文庫 未確認未来少女(イラスト完全版)