Infinity recollection

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文句の付けようがないラブコメ2 (ダッシュエックス文庫) [感想]

文句の付けようがないラブコメ2 (ダッシュエックス文庫)

 

頬の筋肉が緩むこと緩むこと。文章を読んでいてここまで身悶えるラブコメは文句のつけようがない。一巻のときから感じてはいたのだけれど、主人公である優樹とヒロインである世界の関係が何だか明治大正浪漫とでもいいましょうか。どこか古風な間柄や距離感がついつい背中を押してしまいたくなるのですよね。世界に関しては口調がまんま古風で変わっているわけですが、恥ずかしがりやだったり世間を知らなかったりする部分と儚い雰囲気が相まって大和撫子を思わせますし。優樹にしたって珍しいくらいに真っ直ぐで好きなものは好き嫌いなものは嫌いとキッパリ言い切れる男らしさがあるのが純然たる昔の日本人の雰囲気を感じるのです。それこそ世界に対して好きだとプロポーズしてしまうところや、おチヨさんとのやり取りでも冗談と言いつつ世界への好意を口に出来るところ。照れているのだけれど傍目には見せずに完遂するところが男ですね。

 

「見た目も可愛いし、仕草も可愛いし、考えていることも可愛い。可愛いものだけで構成されている可愛いモンスターです。なんなら結婚したいと思うくらいです」

 

作中では優樹が世界を表現するときの台詞に彼の優しさや愛しさが詰まっている。歯が浮くような台詞もあるけれど、それがいいのです。身悶えした後に胸を締め付けられるような何ともいえない感情の渦が生まれる。これは結末が分かっているからなのだけれど、二人が全力で恋をしていく様がひたすらに底抜けにポジティブに描かれていくものだから、読み手の心は憂愁な不安な気持ちに沈んでいくようでした。感情の落差に翻弄されます。

一巻では優樹が世界を救う側に回っていたのが鮮明でしたが、二巻では優樹の周囲も幸せではないことが明確に言及され表現されるので、むしろ救われていたのは世界ではなく優樹だったように映りました。優樹は自分のことをクラスに馴染めてないとか仕方ないとか明るく言いますが、彼にしても様々な葛藤があったことは想像に難くない。優樹も世界と出会うことで変われたのでしょうね。恋をしてしまうのも仕方のないことなのかもしれませんね。一目惚れだったのかもしれませんね。人が恋をする瞬間をというのを読ませてくる本作は中々に文句が付けられませんね。

では、次の後編を楽しみにしつつ。