Infinity recollection

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妹さえいればいい。 (ガガガ文庫) [感想]

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

 

またとんでもないモンスター作品を生み出してしまいましたね。やはり平坂読先生は天才に違いない。「ねくろま。」ではヒロインが常にハダカという画期的なアイデアからホラー系ヒロインを読ませてくれましたし、「僕は友達が少ない」は言わずと知れた残念系ヒロインを読ませてくれました。レーベルが変わってもヒロインをようしゃなく明るく脱がしに積極的に全裸するのは変わらないのですね。逆に安心しちゃうから不思議。今回はさしずめ、ぶっ飛んだ系ヒロインやもっと直接的に変態系ヒロインと言ったところでしょうか。妹キャラとのラブコメ作品なのかと思ったら、妹キャラが大好きなライトノベル作家が主人公のお話でした。しかも割りと下品というか、主人公の思考回路がそもそもぶっ飛んでいて妹に対する愛が重すぎること重過ぎること。作中作の主人公が執筆したラノベには妹キャラが毎回登場するのだけれど、文章におこされたときの破壊力たるや、とてもじゃないが公共の場では読んではいけない。これは一人部屋に篭って静かに読むべき作品でした。作家業の大変さや面白さや夢やらとレトロ・アナログゲームとビールを詰め込んで、キャラクター重視エンターテインメント重視でエロくしたらこんな作品に仕上がるのかもしれませんね。仮にもライトノベル初心者にはオススメできそうもない作風に仕上げてくる読先生は紛れもなく漢ですし、「僕は友達が少ない」が好きだからって継続で作者買いしてくれた人たちをばったばったと切り伏せていく画まで見えました。この作品を読んでいたら「……どうしたの?何か悩みとかあるの?」って心配されるまである。

 

ライトノベル作家の生態をあることなのか、ないことなのかは分かりませんが描いているわけですが、あとがきで渡航先生が兼業作家と専業作家の違いに言及しているのは面白かったです。基本的に話はコミカルに進みますが、ふとした瞬間にそういった業界あるある的な側面をシリアスに語っていて興味深い。才能の有無で天才系作家と職業系作家に分類される云々で作家の劣等感や葛藤や羨望といった生々しい感情を描いたり、登場人物たちが学生だから青春活劇に見えるけれど書いてあることはキツめですし、ちゃんと心が痛い現実感がある。ぶっ飛んだキャラクターを配置して変態的な台詞を言わせているのに、作品としての描きたいところがここだよというのをしっかり見せてくれるのは平坂読先生だなと。また、某有名ライトノベルランキングを派手に袈裟切りしていたり、ラノベを語ることに対して縦断爆撃してみたり、出版業界に警鐘を鳴らすどころかぶっ壊しにかかる読ちゃん節には脱帽。レーベルが変わっても己を貫くスタイルに惚れますね。

 

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)