空色パンデミック3 (ファミ通文庫) [感想]
空想と現実の境界はどこなのか。
凄いの一言に尽きる。二巻も良かったのだけれど、その二巻で気になっていた部分を三巻で補完するどころか、それを更に広げて、より上位に読者を連れて行く。
物語の構成が絶妙に上手い。
作中で主人公の仲西景は、自分が本当は野中空であり、仲西景という架空の存在を演じていただけと考えるわけだが、それこそが空想なのか、はたまた現実なのか。
そこに空想病が持っている怖さがあって。自分では違うと思っていても証明が出来ないので、空想か現実かを考えることから破綻してしまう。
キャラクターである景も困惑するけれど、読み手にしてもそれは同じことで、裏を予想しているところに、その一歩先を悠然と行くものだから、本当に最後まで読まないと分からない。
ましてや、エピローグで締めたところに、エピローグでひっくり返すギミックだ。見事にやってくれて流石としかいえないだろう。
また、キャラクターたちの関係性が面白いのも変わらずで。クリスマスを結衣と一緒に過ごすにあたり、プレゼントを青井と買いに行くのだけれど、青井が可愛らしすぎる。
景は結衣のことが大好きだろうけれど、青井のことも好きで。出会い方が違えば付き合っていてもおかしくなかったのかな、何て考えてしまう。そう思わせてくれる書き方が心地いいし、青井と結衣が上手い具合に対比になっていて相変わらず上手い。
メアリーと青井に結婚を迫られる景に、ニヤニヤが止まらなかった。
これでセカイ系編が完結ということだけれど、ここからどのように繋ぐのか非常に気になるところ。少なくともセカイ系編は傑作だった。
面白かった。
Presented by Minai.
- 作者: 本田誠,(イラスト)庭
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2010/08/30
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 61回
- この商品を含むブログ (36件) を見る