星界の戦旗〈3〉家族の食卓 (ハヤカワ文庫JA) [感想]
ジントが故郷に帰る。
帝国の作戦がひとまずは落ち着いたので、その間にジントはハイド星系へ行くことにする。これにはラフィールも星界軍に休暇願いを提出してついていくことに。
このラフィールの行動からして、これまでの話があってのことなので嬉しい。
アブリアルとしても軍人であることが性に合うであろうラフィールが、ジントについていくのだから、紋章と読み比べてしまうと、彼女に対する印象が随分と変化したのだなと感じる。
また、ジントとラフィールがそれぞれの選択をしている内に、他のキャラクターも同じように選択をしていて、作中でも彼らの活躍とつながりが読める。
ソバーシュとエクリュアの二人は星界軍に休暇願いなどを出したわけではないので、そのまま新造艦に割り振られ、特にソバーシュなどは艦長になっているので驚いた。
これがそのままハイド星系での軍事演習へつながるのもそうだけれど、最終的にジントとラフィールが星界軍に戻ったときへの伏線にもなっているのが上手い。
――そして、家族の食卓。
ジントとティルとの再開が描かれるが、なんとも切ない。普通に握手を交わして、食卓を囲むことはできなかったのだろうかと思わずにはいられない。
ティルの気持ちも分からなくはないが、それでも彼のことを嫌いになってしまいます。ジントがハイド星系を愛しているだけに、冷たすぎるように映るから。それはクー・ドゥリンにも言えて、帝国人は嫌いだがジントは好きだ、そんな感情は分かるし、嬉しいのだけれど、一線は越えない。何だか悲しいし、やりきれない。
帝国貴族として、アーヴとしての義務を果たしたジント。アーブとして生きていることを選んだのだから当然ではあるのだけれど、ハイド星系に関して言えば、もうすこし救いのある終わりはなかったのだろうかと考えてしまう。
面白かった。
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