Infinity recollection

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ルナティック・ムーン (電撃文庫) [感想]

ルナティック・ムーン (電撃文庫)

 

 藤原祐さんの最初の作品。

 

 世界が『混乱』によって激変してしまい数百年。人類は過去の科学技術を使いながら生きながらえてはきたが、少しずつ衰退していた。機械都市バベルと、その直下にあるスラムを舞台に描かれる物語。

 

 ダークSFな雰囲気が好きになれた。

 

 人類が衰退の一途を辿っているのもそうだけれど、人類が『変異種』と『純血種』に分かれており管理されたりしたり、ケモノのビジュアルが絶妙に気味悪かったり、とにかくファンタジーよりはSFを強く感じた。

 

 主人公のイルはスラムの住人だ。荒廃した世界に住んでいて、いつ死ぬとも分からない。滅ぶであろう世界で、それでも生きている。逆に、シオンはバベルに関係する人間で、彼女もまた死と隣りあわせで生きている。

 

 そこには『変異種』と『純血種』という壁がお互いにあって――。

 

 二人を中心に、視点を移動させつつ描いていくのだけれど、この対比から見えてくる世界観や設定や登場人物の関係性が凄い。人間の醜悪さや、純真さ、色々と見えてくる。

 

 見事に倫理観を揺さぶられる。

 

 内容はかなりハードだ。人の生き死には勿論のこと、明確な殺意が表現されたり、生きる為ならばという考え方やら、最後は気色悪い気持ち悪いでは終らないケモノが、後味の最悪な展開を提供してくれる。

 

 イルとトツメの衝突もそうであるし、イルに対する父と姉、キキトとシュシュ。さまざまなカップリングで展開してくことが暗い。明るい希望を持たせておいてどん底に突き落とす。

 

 凄かった。読んで一発で世界観に浸かってしまった。

 

 終始、鬱々としているし、救いがあるのかも判然としないので、そこら辺を考慮した上で読むなら楽しめるだろう。面白かった。

 

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