AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫) [感想]
青春していました。学園ラブコメという側面も持っていますが、青春。
物語は、普通の高校生として高校デビューしたはずの佐藤一郎が、深夜の学校で「魔女」の格好をした佐藤葉子に出会うことで始まる。良子は学校でもローブを脱がず、一郎以外の生徒とは交流を持とうとしない。
これらは良子の中にある「設定」に順ずるもので、要するに良子は中学生が主に陥る病、アニメ的ゲーム的な設定に憧れたが故の病をわずらっていて、一郎はそんな良子の世話役を担任からお願いされてしまう。一郎の高校デビューは辛くも崩れ去り、一般人のクラスメイトからは白い眼で見られる学校生活をおくることに。
そんな、痛いけど、何か爽快感のある青春物語になっている。
一郎が良子に今の格好をやめるように言っても、良子は頑なに設定を続ける。一般人と佐藤たちの間に広がっていく溝、当然のように嫌がらせが始まり、イジメに繋がっていきます。
でも、一郎は面倒見のよい良い奴なので、良子を放っておくなんてことは出来ない。――実は、一郎も過去に良子のようなことをやっていて、高校に進学するにあたり死ぬ気で卒業した過去を持っている。
なので一度、良子の場所から抜け出しているだけに、良子の気持ちも分かるし、抜け出して欲しいという気持ちもあって、どちらの側でも上手く立ち回れるポテンシャルがあって、彼が奔走する姿は素直に格好良い。
イジメられている良子にしても、普段はイジメに対して無頓着なのだけれど、ふとしたところで心が折れて、人間臭さで出るのが良いし、それを受け止める一郎がまた良いなと。
登場人物は全員が全員濃いのだけれど、その濃さが嫌ではなかった。妄想溢れるところは読み難いというか、痛いのですが、脇役のちょっとした言動が好きになれて、物語を面白くしてくれた。
中盤の小鳩さんと伊藤くんの良い人オーラにはぶっ倒れそうになりました。どこまでが本心なのか分かりませんが、心が表れるような良い人ぶり。
そこからの盛り上がりも流石で、現実と妄想を乗り越えて次に進もうとする、一郎の本気に拍手を送りたい気分になった。良子の全力には、一郎も全力で立ち向かっていた。一郎だから良子を止められた、それを強く感じました。終盤では期待していたことを全部やってくれた印象。
読後感は素晴しいの一言。
物語のバランスが良かった。キャラクターが楽しめたので、その魅力に引っ張られるように軽快なテンポで進んでいく物語、凄かった。
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ガガガ文庫 AURA ?魔竜院光牙最後の闘い?(イラスト完全版)
- 作者: 田中ロミオ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/11/19
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