火の国、風の国物語〈3〉星火燎原 (富士見ファンタジア文庫) [感想]
過去編。
解放軍の指揮官であるジェレイドを主人公に、農民たちを率いるに至った経緯が、アレスとの談話という形で描かれる。ジェレイドとアレス、お互いに正義をぶつけ合う姿が熱い。
アレスは国王を信じているので、反乱を起こす前に直訴すべきだったという意見を貫く。反対にジェレイドは貴族が力を持ちすぎているので、国王に直訴したところで変わらないという意見。
そんな平行線の中でも、ジェレイドが放った、貴族には理解することが出来ない、という言葉には重みがあった。アレスが善人というのは分かるが、貴族全体がアレスのような人間ばかりではない。
アレスにしても、子どものときから貴族だったのだから、農民の苦しみは理解できない。アレスにはアレスなりの苦境があっただろうが、それは貴族という社会の中での苦境だろう、恵まれた苦境なのだ。
ジェレイドが主体の話だからか、彼の正しさが際立つ。
どこかまだアレスは全体を見れていない。国王を妄信し過ぎているように映り、ジェレイドと邂逅したことでその行動にも綻びが見え始めた。
今後、この話がどこにいくのか期待だ。このまま二人は相容れないまま進むのか、それともアレスが反乱軍に力を貸すことになるのか。先が読めないので、とても楽しみだ。
残念なところは、過去編というわりには良いところで物語が終ってしまう点だ。物語に深みを出すという目的は果たせているだろうから、これで正解なのだけれど、モンフォードとのやり取りも読んでみたかった。
何はともあれ、面白かった。続きも読みたい。
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- 作者: 師走トオル,光崎瑠衣
- 出版社/メーカー: 富士見書房
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