Infinity recollection

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フェイブルの海 (講談社BOX) [感想]

フェイブルの海 (講談社BOX)

 

マガミシリーズ第ニ弾。「ギャルゲーにしてやる」

 

前作より格段に面白くなっている。それは読み手側の受け取り方が変わった、前作を読んでいるという前段階を踏んでいるからかもしれないけれど、楽しめた。

 

相変わらずキャラクターとの掛け合いが面白い。カノンの他に新しいボディガードとして灰羽イスカが同居することになるのだが、これまたシチュエーションで楽しませてくれた。

 

学校に通うにしても、イスカのことが日常を変えていくし、そもそもカノンに慣れたかと思いきやこれだ。真上の周りにいる女の子たちが嫉妬したり、それに真上もイスカという存在を意識する場面が少なからずあるので、それがまた良い。

 

そんなラブコメを楽しみながら、連続殺人を眺めつつ、本題を語る。

真上草太郎の全てを回避していく、否定能力は徹底していた。

 

作中で登場する作家兄妹がいるのだが、この二人は受け取り方は読み手しだいだというスタンスの語りをする。それは全くその通りなのだけれど、この辺りが物語を皮肉っているようにも映るし、兄の考え方と妹の考え方で見えてくるものが興味深い。

 

これを読んでどこを面白かったのかと捉えるのは読み手であり、どこを切り取っていくのかは読み手。妹の小説には娯楽があってこそで、メッセージ性はいらないというスタンスと、兄の小説にはメッセージ性が大切であるというスタンス。

 

それをそのままぶつけている本作の立ち位置。雁字搦めにされて海に放り投げられたかのように、思考が渦を巻く。最後まで読み終わったときに、何かを掴んでいればそれでいい。つかめているものは読み手にしか分からない。

 

面白かった。キャラクターと物語、読後感はあっさりしているけれど、第一弾よりもスマートになっていて読みやすい。娯楽という要素でも物語を読めてしまうのは、この作品の魅力なのだろう。

 

 Presented by Minai.

フェイブルの海 (講談社BOX)

フェイブルの海 (講談社BOX)