Infinity recollection

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ごめんねツーちゃん ‐1/14569‐ (富士見ファンタジア文庫) [感想]

ごめんねツーちゃん  ‐1/14569‐ (富士見ファンタジア文庫)

 

第22回ファンタジア大賞 銀賞受賞作

 

完全記憶能力を持つが故に、その弊害として人格が無数に分裂してしまう病、メモリーシンドロームを患っているツバサ。彼女の人格は優に14569個に別れていたが、本人はそれを自覚していない。そんなツバサと出会った主人公ナオは、14569個ある人格の内、一人に恋をしてしまう。

 

サンタはオフになにするの?

 

ツバサが可愛らしい。まるで子供のように突拍子もない言動をとる姿に和み、笑えた。会話が成り立っているのか成り立っていないのか、ツバサは自らの基準で物事を進めるのだが、それが面白かった。

 

自己完結しているようでしていない。曖昧で不思議で捉えようのないところが可愛らしくて、魅力的に映った。

 

また、それは登場するキャラクター全員に言えることかもしれないが、誰もが何を考えているのか捉えようがない。ツバサはそれが純粋に魅力に直結して、ユキムラやイブやナオについては変に大人びている印象。これもかなり曖昧なもので、どこか宙に浮いている。

 

そういう意味で、感覚で読む作品。

 

感覚で読んで、何か掴めれば万々歳。物語を読めば分かるのだろうけれど、何がしたいのか、タイトル然り、その辺りが受け取り難い。作中に登場する書物や音楽から、どことなく推測しつつもやはり曖昧。

 

個人的にはツバサとイブと同じくらい、またはそれ以上にトーコが大好きなので、ナオの選択には疑問が残る。彼女を拒否する要素は見当たらないように映ったのだけれど、ナオはどこが嫌だったのだろうか。どう贔屓目に見ても彼女は完璧だったはず。単純にイブのためということだろうか。それとも、最後の台詞から、トーコのことを嫌っているわけではないけれど、ということだろうか。

 

――だって、三人は一人だから。

 

人格が分かれているだけで、身体は一つしかない。別人だと言い切るのは簡単だけれど、ナオはどこかで切り捨てられない部分があったりしたのだろうか。

 

トーコが抱えたツバサという存在の大きさと自分の薄っぺらさ、ユキムラにしても全てを手に入れている好青年が故に自分が分からなくなっていて。ナオはそんな彼らの価値観と出会うことで何を得たのだろうか。

 

面白かった。

 

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ごめんねツーちゃん  ‐1/14569‐ (富士見ファンタジア文庫)

ごめんねツーちゃん ‐1/14569‐ (富士見ファンタジア文庫)