花物語 (講談社BOX) [感想]
神原駿河の青春。
期待を裏切るというか、物語の流れを容赦なくひっくり返すというか。何でもないように見せかけて、唐突に展開が動くのは著者らしさで、相変わらずだ。
そういう意味では、沼地の語りには驚いた。神原ではなく彼女が語るので、一体いつになったら終わるのかと逆の意味でハラハラさせられたし、終わったと思ったら続くなど、会話で繋ぐところは著者だなと。
いつもと変わらずなことをして、随所で爆弾を置いていく。
物語は神原の視点で進むのだが、暦の視点で語られない分だけ素の彼女が見えたし、あとがきで語られているように、これがそのまま神原の違いを映し出す。
他人から見た自分と、自分が感じている自分。
暦の視点で語られる神原はエロい子で、暦のことを尊敬していると感じているわけだけれど。それが神原の視点では、自分は意外とエロくはないし、むしろ暦の方が下ネタを多様しているように映る。誰もが同じように、一人として同じ自分はいない。相手の中にはまた違う自分がいる。
沼地と神原との対比でもそうであるけれど、怪異に関わった彼女たちが、他の共通点であるバスケを通して最終的に同じ立ち位置に立てたことは良かった。
それがそのまま青春であったし、これまでのシリーズを通してみても、一番学生らしい話であった。怪異は登場するが、本質的には必要ではない。自分と向き合うこと、自分は自分だ。
面白かった。神原と沼地、二人が成長していったことを物語から感じ取れた。
Presented by Minai.

- 作者: 西尾維新,VOFAN
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/03/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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