サクラダリセット5 ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫) [感想]
ようこそ、夢の世界に。
すっぱいブドウとスイートレモン、現実と空想、相麻菫と春埼美空。物事は、視点を変えることで肯定的にも否定的にも捉えることが出来る。どちらが優れているだとかは関係がなくて、全てが表裏一体。
全てが大好きだけれど、大嫌い。そこに折り合いをつけて、否定を肯定しなおしてそれでもいいと思えるものが一番大切なもの。それらは対象があって始めて感じられる感情であり、判断できる指針にもなる。
貴方の幸せとは何だろうか。
物語は夢の世界で少女ミチルと青い鳥に出会うことになるけれど、浅井ケイを大切に想う二人がそれぞれに考えをぶつけ合うのはどこか爽快だった。芯は同じで方向性が違うのだけれど、その違いが険悪にはならない。フェアプレーを楽しむように語った相麻菫と春埼美空に好感が持てた。
では、浅井ケイにとってのすっぱいブドウとスイートレモンは何なのだろうか。彼はミチルが抱えているものが逃避であると言う。変化してきた春埼を見て、変化していない菫を見て、彼は何を考え感じたのか。彼自身も、気付けることに気付けていない。もしくは気付いているのかもしれないが気付いていないふりをしている。
楽園なら好きに作ることが出来て肯定的な世界を創造できるけれど、そこにあるものは否定でしかないように思える。それこそ鳥かごになってしまって、身動きが取れない。ときに世界とはそこまで複雑ではなくてシンプルな方程式で導き出せたりするもの。
ケイに手を引かれて、自分を自覚したミチル。繋いだ手で連れ出されたのは、夢からだけではない。
面白かった。菫を普通の女の子にすることが出来るのか、続きも期待してます。
Presented by Minai.
サクラダリセット 5 ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)
- 作者: 河野裕
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: Kindle版
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