Infinity recollection

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消閑の挑戦者―パーフェクト・キング (角川スニーカー文庫) [感想]

消閑の挑戦者 パーフェクト・キング (角川スニーカー文庫)

 

第6回角川学園小説大賞 優秀賞受賞作

 

天才少年である果須田裕杜が作り出した、究極のゲーム〈ルール・オブ・ザ・ルール〉、類稀なる頭脳と肉体を駆使して戦うこのゲームは、裕杜が世界中から集めた天才たちで行なわれる。そんなゲームに、高校生である小槙は巻き込まれてしまい――。

 

物語は小槙と、そのパートナーである春野祥の視点から描かれていくのだけれど、小槙は正式に招待されたわけでもなくゲームに巻き込まれただけ。なので、二人は離れ離れのまま、しかもパートナーすら分からないという状況でゲームは始まる。二人は合流を目指すのだけれど、他のプレイヤーや防御人から妨害を受けて上手くいかない。そこに、これからどうなるのだろうと期待したし面白味がある。

 

そして、とにかくキャラクターが数多く登場するのだが、数いる割りに、良く書き分けられているし読みやすい。彼ら彼女らが物語でどう繋がるのか楽しむことが出来たし、それぞれ個性があって楽しい。

 

特に小槙は仕草など可愛らしくて良い。学校の成績は最下位だけれど、それは数字に溺れてしまうだけで、本来なら天才に近い存在。けれども、常に何でも考えていてどこか欠けているのは台詞からも受け取れる。そんな不思議さが関西弁と相まって面白かった。

 

考え続ける小槙が、祥たちと関わったことで成長する。

 

ザ・スニーカー100号記念アンソロジーで本作には始めて触れたのだけれど、短編を読んでとても面白いと思えたので購入。――読んだ後の率直な意見では、これが何で三巻で止まっているのか、売れないのか不思議でした。十分に面白い。

 

強いて挙げるのなら、プレイヤーが使用するプログラムに面白味が薄かったことだろうか。ギミックとしてはとても面白いし、物語に動きが出るが、プログラムが0個になったらゲームオーバーという規定にはそれほど緊迫感を感じなかったし、プログラムで何とかなりそうとある意味でバランスが崩れた。加えて、数学の問題が簡単……と言ったら変だがどこかで見たことがあるし知っているものばかりというのが挙げられるだろうか。

 

でも、最大の要因はタイトルなのかもしれない。テーマが直感的に伝わり難いので、果たしてどのような傾向の作品なのかと。そのままスルーされてしまったのかも。

 

何はともあれ、面白かった。

 

 Presented by Minai.