キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫) [感想]
第5回小学館ライトノベル大賞 優秀賞受賞作
海里克也は保健室で目を覚ましたが何故ここにいるのか分からない。保健医の話では、階段で転んで気を失ったらしいが、覚えていない。十歳のとき事故で家族を亡くし、記憶を失っている克也はまた記憶が消えたのかと考えるが、その日から幻覚が見えるようになり、失くした記憶までもが断片的に再生され始めた。
心理学を織り交ぜながら、主人公が自分を追い込んでいくのが怖い。
失くした記憶から断片的に思い出すのは、自分が首を絞めて人を殺す場面。加えて、最近の記憶が曖昧であることから、多重人格なのではないのかと不安になり、周りの人間にすら不信感を抱くようになる。自らが精神的に追い詰められていく。
中盤、克也は養父から記憶を失った真相を教えられ、自分が殺人事件の重要参考人になっていることを知る。このことから益々、自分は殺人鬼だったのだと思い悩むのだが、養父は克也の無実を信じてくれる。
逃避するのではなく、真正面から向き合っていく。
自分は人を殺しているのかいないのか。 サスペンス的な雰囲気と、一体誰が犯人なのかと考えさせる作品の作り方には好感が持てた。最後まで読ませる面白さがあるし、文章も読みやすい。楽しめた。
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- 作者: 赤月カケヤ,晩杯あきら
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/05/18
- メディア: 文庫
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