灼熱の小早川さん (ガガガ文庫) [感想]
炎の剣と氷の剣。
問題児がいるわけでもないごく一般的なクラスにも関わらず、学級崩壊の足音が直ぐ近くまで忍び寄る。それを権力と正義でまとめようとする小早川さんが熱い、熱すぎる。彼女は誰よりも強く不器用で一生懸命。
校則や不正には容赦が無い小早川さんの姿勢は、外から見れば当たり前の姿なのだけれど、クラス内から見れば迷惑この上ない。口うるさく注意してくる小早川さんに、クラスメイトの心は離れていく。悲しいけれども、厄介者扱いで浮いてしまうのは当然で。それが嫌なら空気を読むしかない。
主人公の飯嶋はそんな小早川さんの行動を調停する役目をクラスから押し付けられ、それまで上手く立ち回っていた飯嶋のポジションが崩れていきます。
ここで強いのは、飯嶋がいつの間にやら小早川さんの味方になるところだ。それもごく自然に。乱れた秩序を取り戻すべく、奮闘する二人。協力してくれないクラスメイト、溜まる仕事。淡々と崩壊していくクラスは魔窟だった。
屈折した現代の学校を描きながら、飯嶋と小早川の関係が徐々に変化していくのを見せてくれたのは良かった。
ただ、物足りなさを感じてしまうのは残念。結局、スクールカーストのオチに期待するような爽快感がないので、いつの間にか終わってしまったという印象を受けた。大逆転するわけでもなく、淡々とあっさり終わる。
確かにそれこそ現実らしさなのかもしれないけれど、期待していた部分が読めなかったのは退屈さに繋がってしまう。ラストに持っていくまでにもう少し何かあれば、すっきりした気持ちで読み終われたのだが……。
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- 作者: 田中ロミオ,西邑
- 出版社/メーカー: 小学館
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