マージナルワールド2 (講談社BOX) [感想]
自分の携帯電話で、その携帯の番号に電話をかけると行ける異世界――圏内を舞台に、アガシオンと呼ばれる巨大ロボットとBAGsとの戦いを描くのが本作。世界観の設定が抜群に上手い。世界を想像して楽しくなってしまう。
一巻で主人公の光宮は嘯樹の敵討ちのために圏内を駆けずり回っていたわけだが、最大の標的である水嶋は殺せず、水嶋から灯を守ろうと奮戦した。今回もそこは変わらずだ。けれども、灯がいる現実世界と圏内とを見比べてどこか何をやっていいのか分からない自分がいたりもする。そんな中、同じ大学生の在無が連続殺人鬼に殺されたことで、事件の捜査に乗り出した。
現実世界じゃ、僕は弱いからだ。
調べていく内に、連続殺人が圏内絡みの事件だったということが判明してくるのだが、殺人鬼であるデイストーカーを前に啖呵を切る光宮は格好良い。現実世界じゃ弱い、それは身体的な意味もあるだろうが、大学での彼を見ていると精神的な面も含んでいる言葉に思えて印象的。
なにせ友達がいない光宮は大学に行っても孤独だ。ふと周りを見渡すと楽しく談笑する男女の姿があって、憂鬱になる。けれども、中盤あたりで高校の旧友と再開することで、友達がいないと思っているのは自分だけだったことが判明する。
親友とは縁が切れたと思っても切れていないもので、電話番号教えろ、もう勝手にアドレス消すなよ、と気さくに話しかけてくる木下の友情に心が温かくなる。――と同時に、重要な分岐点であることを感じさせる場面でもある。木下は水嶋の仲間なので、これで序盤に説明された決闘システムと繋がってしまったことになる。
アガシオンを操ってのバトルも読み所ではあるが、現実世界と圏内を行き来することで登場人物たちの心の揺れが見えてくるのが面白い。
また、今回はマージナルワールドの秘密にも触れられている。アガシオンというロボットの謎が垣間見えたり、圏内に入ってくる人間たちの構造、何より嘯樹という女の子の存在の大きさといったら無い。終始彼女を追いかけていたし、終盤になって嘯樹にとっても灯という存在の価値が表現されるのだからたまらない。
面白かったし、面白くなってきた。世界の一つや二つ破壊してしまえる行動力は青春。続きを早く読みたい。満足。
Presented by Minai.
- 作者: 湊利記,村崎久都
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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