消閑の挑戦者3 ロスト・エリュシオン (角川スニーカー文庫) [感想]
従姉妹の鈴藤いるるに連れられて、ウォリスランド共和国を訪れることになる小槙たち。そこには何故だか春野祥が一緒にいたりもするのだけれど、事件に巻き込まれていくのは変わらない。”混沌の街”と呼ばれるアウルスシティを舞台に、狂気と戦う。
天才であるが故におかしな方向に進んでしまった人たち。科学が発展するためには倫理観を捨てるべきという言い分と、倫理観だけは失ってはいけないものだという言い分。混沌の街で目にした人体実験をどう捉えるべきなのか。
小槙と祥の視点か並行していく流れが良い。
小槙はイオという少年に出会うのだが、彼は一日しか記憶の保持が出来ない。だから毎日がはじめましてから始まるのだけれど、本人はそれでいいという。勿論苦労している点だらけなのだが、物語を読んでいくことで彼をポジティブにさせている部分が見えてくる。
祥もイズミという少女と出会うことになる。一方的に押し付けられる愛情に辟易としつつも、嫌いではない。デートなどしてしまったりもする。
そんな別ベクトルでの出合いが、ふとしたところで交わって同じ方向を向く。人間関係のちょっとした機微が魅力的に映りました。この二人はどんなことを考えているのだろう、感じているのだろうと想像しながら読むと、台詞と雰囲気から見えてくるものがある。
タイトルの副題も美しい。物語を読んでからそれを見ると切なくなってしまう。面白かった。
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消閑の挑戦者3 ロスト・エリュシオン (角川スニーカー文庫)
- 作者: 岩井恭平,四季童子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/05/29
- メディア: 文庫
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