ココロコネクト ニセランダム (ファミ通文庫) [感想]
新入部員に迫る「ふうせんかずら」の影。ニセランダムということで文研部員たちの偽者が現れ、これまでの信頼関係を崩そうとしてくるのだけれど、いつもとはアプローチの仕方が違う。というのも、今回は「ふうせんかずら」が動いているわけではない。
宇和千尋が抱える闇というか、価値観やら葛藤を見事に利用されて操られてしまう。「ふうせんかずら」を楽しませるために、面白くするために、千尋は偽者役となって新入部員たちを騙す側に回る。手に入れた力に魅了されるがごとく行動してくこととなる。
これがまた鬱々としてる暗さを持っているので、読んでいてこちらまで黒くなってくるのが凄い。人間が直接関わっているというだけで、ここまで不快さが増すものなのか。今までは実態がない分だけ、気持ち悪いことが先行していたが、実態があると胸焼けするような痛みを感じる。
よくある「幽霊や化物よりも、人間が一番怖い」とは言い得て妙なのだと痛感した。
どこか前を向けないで立ち止まってしまった千尋。自分の世界が灰色に映る彼には、友達や家族と過すことは苦痛でしかない。そんな彼を変えるきっかけになったのは紫乃で。出来ることを必死に頑張る彼女の姿に、目を覚ます千尋が良い。これまでに失った信頼を取り戻すために覚悟を決めていった彼の行動はクールで熱い。
起これ、自己覚醒。起こせ、自己革命。
自分は悪くない周りが悪い、逃げに入っていた、けれどそれじゃダメなことにも気付いてる。なら、自分から変わるしかない。変わってみたら、案外居心地がいいかもしれない。体育祭を背景に事件が描かれていくのだけれど、終盤に千尋の一言からクラスが結束していく流れは青春だなと。
そして五角形は七角形に――。
これが本当の意味での新しい文研部の始まりであると同時に、これまで面白くさせるために数々の現象を仕掛けてきた「ふうせんかずら」に新しい方向性を見せた話にもなっていて。これまでとは違うアプローチをしてきた「ふうせんかずら」が、今度はどんな手段を講じてくるのか気になります。それでも、今や七角形となった絆が壊れることはないのかな。
面白かった。
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- 作者: 庵田定夏,白身魚
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2011/10/29
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