桜色の春をこえて (電撃文庫) [感想]
高校入学と同時に一人暮らしを始めることになった杏花だったが、不動産屋の手違いにより借りたはずの家を出て行かなければならなくなってしまい、途方にくれる杏花。しかし、そんな彼女の隣に住んでいた少女から、私の家に住めばいいと救いの手が差し伸べられる。
少女二人の同居と青春を描く。
澄多有住は見た目は不良、性格の方もわがままで気まぐれ、停学の経験まであるという杏花とは真逆の女の子。しかしながら、澄多さんの言動を精査していくと、不器用なだけで、人とは少し違った感性の持ち主ではあるが、悪い人ではないことが分かる。
物語は杏花の視点で描かれていくのだが、最初はそんな澄多さんの良さには気付けない。相性からして悪い二人が同居するのだから、関係はぎくしゃくしたままだ。けれども、ふとしたことで少しずつ仲良くなっていく。
お互いの家庭の事情など背景が見えてきたときに、学生の葛藤らしい淡い苦さを感じる。境遇が似ていることが分かってくると、現状取っているお互いの行動などから喧嘩にもなるのだが、同じ家に住んでいて喧嘩をしないというのもおかしな話だ。
むしろ、今まで相手の顔色をうかがっていて、本心をぶつけ合ってこなかったわけで。それが終盤になって意見を真正面から素直に言えるまでになった。その後仲直りするところまでお約束ではありますが、二人の繋がりの強さが見えてくる展開は良い。
女の子が主人公の物語らしい繊細な話作り、素敵でした。
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- 作者: 直井章,ふゆの春秋
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/11/10
- メディア: 文庫
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