ギフテッド (電撃文庫) [感想]
世界最高峰の企業、天子峰。その幹部採用試験が行われると聞き集まってきた天才たちは、一次試験をパスして閉鎖都市に放り出される。そこは自衛権以外が認められない無法地帯だった――。
基本的人権なんてものは保障されないわけですが、保障されていないのは候補生だけであり、閉鎖都市に住んでいる一般人や教官には適応されるのだから性質が悪い。特殊すぎる環境の中で、いかに早く達成目標を見つけられるかが勝負の頭脳戦。
合格基準は明示されない。
――というのも、命懸けのゲームにも関わらず、どうやれば合格になるのかが判然としない。候補生たちはネットなどメディアを制限されているし、所持金も制限されて試験期間は月給一万円。行動のしようがないが、考えて行動するしかない。
主人公である加納弥助を道先案内人として、他の候補生たちの立ち位置や考え、自らの考察も交えながらゲームの本質に迫っていく流れは面白い。それ故に、序盤は世界観や着地点が見えないので漠然と退屈するかもしれないが、頭脳戦が始まってからは仲間たちの話を聞くだけでも楽しめる。
ゲームや頭脳戦といいつつも、人間の成長や人間の才能と可能性を語ってくれているのは個人的に面白いなと感じた部分。全体的にゲームで引っ張っているというよりかは人間力で引っ張っているような、ゲームシステムよりも心理面の勝負でした。
身体だけ大人になっても精神は子供の人がいる、身体は子供でも精神は大人の人がいる。もし全員が同じ土俵の平等な権力があったとしたら、前者より後者の方が格が上だったりするかもしれない――人間としての格が違う。ふと周りを見渡して欲しい、自分を含めて。
さて、物語は引きの部分であっさりと話が進行してしまったのが少し残念ではある。唐突だったので展開に戸惑ったし、締めでもあるので読み心地に違和感を生じさせる。しかしながら、全体としてはサスペンスやミステリーとしてよく出来ていた。面白かった。
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