アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫) [感想]
親と子の絆。
無駄がないというのが第一印象。<加速世界>で必要になってくるであろうポイント集めを圧縮して、既にシルバー・クロウが強くなった段階から始まるので非常に読みやすい。強くなる過程も大切ですが、二巻はまだそのときではないですし、この作品が持つキャラクターの強さはまた別のところにある。
特に著者の作品ではキャラクターが精神的に強くなる、成長を描いているので、故にレベルの概念はおまけ程度でしかない。
さて、今回はブレイン・バーストの根幹に関わってくる部分と、作品に広がりを与える部分が大きく描かれていた。それは赤の王の登場だったり、一段階上のバトルフィールドの説明だったり、災禍の鎧が巻き起こす呪いだったりする。中でも親と子のシステムは印象的だった。
――そもそも、ブレイン・バースト参加者はどのように増えていくのか。
システムの都合上、ポイント収集のジリ貧は明らか。では、参加者を増やせばいいのだが、そうにもいかない理由がある。ネックはブレイン・バーストをコピー出来るのが一回限りということ。つまり、誰かにコピーを渡した場合、もう誰にも渡せないのだ。たとえ、渡した相手がインストール出来なくとも、一回は一回。
故に、渡した側は親と呼ばれ慕われ、貰った側は子として親を慕う。この関係が続いている内はいいが、反目してしまったときが厄介だ。ブレイン・バーストのコピーを渡している、ということは同時にリアルの知り合いだということを表している。つまり、現実世界でも実際に繋がりがある。
ここが怖い。繋がりは、深い絆であり、ときに呪いにもなりえるのだ。
その辺りを、災禍の鎧を交えつつ描いていたのは上手かった。赤の王であるニコの苦悩と、黒の王のトラウマ。ハルユキは相変わらずネガティブで前のめりに倒れそうになるけれど、倒れる前に一歩踏み出して顔を上げていくのは変わらない。
黒雪姫に励まされたことを思い出して、逆に黒雪姫を励ます。トラウマから立ち上がる先輩の姿も見ものです。
面白かった。
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- 作者: 川原礫
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