Infinity recollection

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銀盤カレイドスコープ vol.1 ショート・プログラム:Road to dream (集英社スーパーダッシュ文庫) [感想]

銀盤カレイドスコープ vol.1 ショート・プログラム:Road to dream (銀盤カレイドスコープ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

 

フィギュアスケートを題材にしている珍しい作品。スポーツなので、どのように描くのか期待と不安が半々だったが、これが上手い。ルールなどを知らなくても、楽しめる作りになっているのは嬉しい。

 

基本的なルールが説明されるにはされるのだが、難しくはない。ジャンプの難易度だったり、配点の仕組みなどをさらっと教えてくれる。これくらいはむしろ、実際にフィギュアの季節に読んだおかげで、フィギュアスケートそのものに興味を惹かれた。

 

特に、試合の場面で、ジャンプやステップ、スピンといった演技で何を表現しているのか丁寧に描いてくれたのには興奮した。疾走感溢れる描写に、タズサが楽しんでいる気持ちまで伝わってくる。

 

物語もタズサが頑張る姿を眺めていく、成長していくのを見ていくのが楽しいですし、ピートとの距離が少しずつ縮まっていくのが微笑ましい。

 

幽霊ピートに取り付かれてしまったタズサは、最初はピートを嫌悪する。それはピートと視覚や味覚、触覚を共有してしまうから。下手に風呂にも入れないし、トイレだって我慢せざるを得ない。女の子の微妙な心理を描いていく。

 

けれども、いつの間にか自然とピートの存在が当たり前になっていくタズサが可愛らしい。いつかいなくなってしまうピートに、どのような感情を抱えれば良いのか複雑なタズサ。いつもは気丈に振舞う彼女の良き理解者となりつつあるピートの関係性は見所。

 

面白かった。

 

 Presented by Minai.