Infinity recollection

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エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫) [感想]

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)

 

第18回電撃小説大賞 大賞受賞作

 

近年好かれるタイプの大賞とは異なる大賞。文章の美しさやキャラクター性に安定感といった、最近の大賞傾向よりは、戦闘兵器に荒廃した世界など、設定や世界観が際立っていた。登場するキャラクターにしても、男の子が目立つという、とにかく硬派な印象。

 

それ故に物語は自然と重く暗いので、読み疲れしそうな印象を受けるが、その世界観がとても魅力的に映るので退屈しない。

 

特に9体作られたという戦闘兵器《鬼虫》の存在。既に7体が破壊されてしまっているので、彼ら彼女らがどのような性格で能力だったのか想像するだけで楽しいですし、何を成してどんな理由から死んでいったのか知りたくなる。

 

これも終盤での戦闘がそうさせた。

 

戦闘兵器《鬼虫》の一体である九曜が叶葉と出合ったことで、兵器から人間へと変化していくことを描いていく、いわば王道のテーマを扱った本作。戦闘兵器でただ戦っていた九曜が、戦う理由を見つけていくことになる。どうやって生きて何を成すのか、悩みながらも自ら決断して突き進む姿は、人間よりも人間らしいのかもしれない。

 

王道のテーマを流れるような文章で丁寧に描いていく堅実さ。中盤以降、世界観に入り込んだところで、これまでのエネルギーを開放するかのように九曜が戦うものだから、爽快感が半端ではない。戦闘も高速で動き回る空中戦を見事に描いていて、映像が浮かんでくるのだから凄い。

 

面白かった。文章も読みやすいですし、美しい。今度は是非とも他の鬼虫を読んでみたい。

 

 Presented by Minai.

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)