ソードアート・オンライン〈9〉 (電撃文庫) [感想]
アリシゼーション編。
異世界にいるキリトが唐突に描かれる。ユージオとアリスという幼馴染がいて、村で与えられた仕事に邁進する毎日。そこにはゲームやら現代やらの空気はなく、ただファンタジックな中世の世界が広がる。確かにSAOなのだけれど、そこはファンタジー世界だった。
美しい世界観。
それ故に、完成度の高さが素晴らしい。続きを前提として描かれているだけに展開がとても丁寧で親切なので、誰もが世界観に引き込まれる。キリトとユージオが手探りで成長していく様には心躍るし、読んでいて手ごたえを得られる作品も久々。
ゲームというよりは純粋にファンタジー世界なので、スキルやレベル概念はなく、痛覚も現実と同様というある意味異常な世界。NPCと思われる登場人物たちも、自然な感情表現をするので本当に人工知能なのか人間なのか、キリトが言うように判断つかない。だからこそ、現実感が半端ではない。
キリトにしても、これまでとは違ってキャラクターが最弱だ。《アンダーワールド》に暮らす一般的な青年と同等の力しか持たないので、強くなっていく楽しみが生まれる。より苦境に立たされることで、ユージオとの友情や勝利への過程がドラマチックに映った。
それを表したのがオークに立ち向かうキリト。SAO内なら相手を瞬殺だろうが、《アンダーワールド》では腕を切られて激痛に喘ぐ、死というものを現実より明確に自覚する。それでもユージオが殺されそうになり、立ち上がる姿、剣士キリトは格好良かった。
ゲームの制約を覆す。
これまでもシステム外の裏技を利用してきたけれども、今回もシステム外の行動をしなくてはいかなくなりそうだ。案内人のキリトも探り探りなので、冒険しているようなワクワク感が良い。それでも、ユージオ自ら決断する場面はこれまでの行動が実ったようで、二人の絆が確認されたというか、キリトの想いが伝わったというか、思わず読み手まで嬉しくなる。
また、VRMMOの新技術『フラクトライト』に纏わる話がSFの要素も補っていて、楽しむ部分が本当に多岐にわたる。現実世界でのアスナとのやり取りだったりもニヤニヤでしたし、一冊丸ごと魅力的。美しい。
キリトとユージオの旅はどうなるのでしょうか。引きも完璧で、続きが早く読みたい。面白かった。
Presented by Minai.
ソードアート・オンライン (9) アリシゼーション・ビギニング (電撃文庫)
- 作者: 川原礫,abec
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 文庫
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