豚は飛んでもただの豚?2 (MF文庫J) [感想]
不器用なところが良い。
何も起こらなくてつまらないのではなくて、何も起こらないことを楽しむ作品。物語で描かれていくのは、一巻から引き続いてボクシング一辺倒の真宮と、三姉妹の奇妙で不器用な関係だ。
瑞希の力を借りて稜との仲を進展させるのかと思いきや、テスト勉強でそれどころではない。真宮は赤点回避のために瑞希に勉強を頼もうとするが、瑞希は自分のことで精一杯。自分はバカでボクシングしか胸を張るところが無いという真宮と、どれもこれも中途半端で自慢できるところが無いという瑞希の対比が面白い。
お互いがお互いを知らない内に励ましあう場面では、停滞していた空気を静かだけれども吹き飛ばしてくれる爽快感があった。
物語を通して真宮が前へ進む。どこか人との距離感をとってきた、過去を引きずっていた彼が、過去を背負って前に歩み始めたことで、自然と周囲との距離が縮まっていく。まさに青春。不器用な青春に、思わず鳥肌が立つ。
けして派手ではないし、事実として何も起こらないし発展していない。けれど読んだ後にこっちまで嬉しくなるばかりか、静かな物語なのに変な充実感がある。面白かった。
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