Infinity recollection

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僕たちはドクターじゃない (メディアワークス文庫) [感想]

僕たちはドクターじゃない (メディアワークス文庫 き 2-1)

 

独特な世界観で展開される医療モノ。

 

主人公のドクが所属する医療チームは、全員が未成年という医者の集団だ。特別医学生と銘打たれた彼らは、日本から医者の数が激減したことから、医者の数を増やすための措置として、子供のうちから英才教育を施された医者になるためのエリートたちだ。医師免許こそ持っていないが、医療行為を行ってもよいとされ、日本各地に派遣される。

 

いや、痛い痛い。医療モノなので手術の描写が勿論あるのだけれど、何でそんな映像を読み手に見せるんだといわんばかりの細かい説明に、思わず目を逸らしたくなる。――しかし、冷静に考えてみると想像しているのは読み手なので、想像しなければいいじゃないとも思うけれど、入り込んでしまうと見えてきてしまうのだよな。

 

病名やら薬品名やら、各種名称がズラズラと並べられていくこともあるが、物語が盛り上がっているところでの応酬なので、必死さと冷静さが伝わってきて熱い。嫌になるというより、心地よい高揚感を得られた。

 

特に診断医のドクが本当に良い奴なのだ。患者のために何をしたらいいのか、甘いといわれても、患者第一。あくまでも冷静に、人の命を扱う職業だからこそ、医者が普段どんなことを考えながら患者に応対しているのかが彼から見えてくる。

 

本音を聞きだして、患者が侵されている病を特定し、適切な療法を選択する。患者の仕草、発言、症状から、瞬時に病名を割り出してしまうのは、単純に格好良い。しかも、カルテの扱い方など、気遣う姿勢が素晴らしいです。

 

医者とは何者なのかと作品から教えられた気がした。患者として病院に行ったときに、医者の見方が変わるかもしれない。面白かった。

 

 Presented by Minai.