ネバー×エンド×ロール―巡る未来の記憶 (メディアワークス文庫) [感想]
タイムトラベル作品。
16年前に大地震があった札幌は、再開発計画で街の周囲に高い壁が聳え立つ、さながら隔離都市へと変貌を遂げさせており、住民は外と中で行き来すら自由にさせてはもらえない。そんな札幌からの脱出を計画していた少年たち元に、未来からやってきたという少女、こよみが現れたことで物語は始まる。
最初は、高所から落下することで過去へと移動出来るこよみが、運が悪くも札幌に来てしまったことで、どうやって過去に行くのか模索していく話かと思った。札幌には大地震のダメージから高層建築物がなく、もう大きく過去には跳べない。仮に過去に跳べたとしても作中で勇夢が言うように、確実に16年以上過去に跳ばないと地震に巻き込まれる。
だから、どうしようということ――かと思ってのだけれど、その問題はあっさり解決してしまって、章が進んでいくにしたがって未来の話になる。つまりは、どうしてこよみが過去に跳ぶことになったのかを観察していく物語。
作中で語られるのは、SF作品の要素だ。タイムトラベル、AI、宇宙論、ロボット、未来都市、仮想空間、美味しいところを全て盛り込んだような内容となっているのだけれど、描いているのは青春と儚さなのでSFだが、深く考えないで読める。
全体的に儚さや物悲しさが漂う雰囲気なので、夏の早朝の空気みたいに透明感がある物語だと印象付けられた。エピローグで巻き起こる大逆転と、目も前にしたときにピースが噛み合い自分なりの解釈を得られたときの開放感と高揚感は素晴らしかった。
アニメチックなSFと、本格SFの中間、さくっとSFを楽しみたい人におすすめ。やはりタイムトラベルっていいですね、面白かった。
Presented by Minai.

ネバー×エンド×ロール―巡る未来の記憶 (メディアワークス文庫)
- 作者: 本田壱成
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2012/06/23
- メディア: 文庫
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