星界の戦旗V 宿命の調べ (ハヤカワ文庫JA) [感想]
第一部完結。
待っていた。待っていましたよ続編。未完で終わると覚悟していただけに、単純に嬉しい。個人的に前作を読んだのは2,3年前だったと思うので、リアルタイムで読んでいた方々と比べると記憶は薄れていなかった模様。……まあ、それでもところどころ曖昧だったのはしょうがないのだけれど。
さて、本編はラフィールとジントの活躍は控えめです。よってロマンスらしいロマンスはないと言える。お互いが理解し合えている良い距離感ではあるので、言わなくても分かる仲になっているのは面白いですけれどね。
また、キャラクターたちのコミカルな掛け合いが良いです。皮肉を言い合っておどけてみせるというか、言い回しがそれぞれに絶妙なのですよね。酒場で戦場で、どんな場所でもユーモアを忘れない。実に楽しく、面倒な人たちですね、まったく。
――本作は波乱の一言に尽きる。
あとがきにもあるように戦争とアーヴが主軸となっている。アーヴがアーヴであり続ける矜持、平面宇宙に適応して繁栄を続けられた理由など、断章と合わせて語られることで、より作品の背景が深堀されていく内容。
アーヴによる人類帝国というのは強大で絶対で、他に寄せ付けるものがいないほど強いというのが、これまで抱いてきた感想で。ラフィールやジントといった個人を描くことで、弱さみたいなものを描いていたように映っていた。そんな二人の小さな冒険も、平面宇宙に拡大することで様々なことを抱え込む。
まさかアーヴが戦で負けるとは思わなかったのだ。漠然と、劣勢と描写されても実感が湧かない。ラクファカールが陥落する段になって、皇帝ラマージュが崩御したのを見届けてやっと理解する。アーヴが敗戦したと。
中盤からの怒涛の展開はゆったりとしているようで、激しい。ラフィールがあれよあれよという間に手の届かないところに行ってしまいそうになっている。ジントはもちろん隣にいるけれど、どこか危うくも感じる。
第二部がこれから始まるということだけれど、楽しみですね。アーヴがこのまま黙っているとは思えないので、苛烈な反撃を期待しています。あと、ロマンスもね。
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- 作者: 森岡浩之,赤井孝美
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/03/22
- メディア: 文庫
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