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ご主人様は山猫姫 (12) 帝国再興編 (電撃文庫) [感想]

ご主人様は山猫姫 (12) 帝国再興編 (電撃文庫)

 

シリーズクライマックス。

 

ここまで来たかと感慨深い限りです。新刊が出るたびに喜び勇んで読んでいたけれど、シリーズとしてきっちりと物語を描いてくれたのは本当に素晴らしいことだなと。完結に向かって綺麗に作品が続いているのが分かるので、最近はこの手の作品が少ないだけに読んでいても嬉しいのです。

 

どうしても商業ですから、人気があるなら続けなければいけないし、人気がないなら打ち切りになってしまいますから。終わり方はこうだからね、と読者側に説明しているような美しい流れで終わろうとしていることは、凄いことだ。本当なら12巻で完結らしいのだけれど、もう一冊続くそうですよ。

 

――さて、帝国再興とあるように、これまでとは違い政治の面を強く押し出して本作を描いているのが印象的。弓と槍を使った肉弾戦から、頭と口を使った頭脳線へ。これまでの表と裏が丁度よく逆転したような采配となっているので心地よい。

 

知能戦とは言っても、動かすのは身体に他ならないので、ある意味、肉弾戦よりも肉弾戦らしさがありますね。晴凛や伏龍だけの視点だけではなく、役職付の官吏を描くことで、再興しようとしている帝国内の戦いが描かれる。

 

特に伏龍は派閥争いや利権関連の権力闘争に巻き込まれるのが読みどころ。強敵を倒して皇帝が凱旋して、晴凛が出世して終わり、じゃないところが凄い。ここから更に帝国の暗部である、フィクサーの立ち位置の人物を描いてくるのだから面白くないわけがない。

 

まさに帝国に革命をもたらしてしまうのだから、読んでて手が震えましたし、見せ場での武者震いと胸の高鳴りは読み手の方が驚くほど。ここに来てまでまだ魅せてくれるのかと。委任状に大立ち回りと、感動せずにはいられないですね。

 

まとめ方はあっさりしているので余韻に浸れないと感じるかもしれないが、それは次巻に持ち越しということで一つ。何はともあれ、傑作に間違いない。

 

 Presented by Minai.