Infinity recollection

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TVアニメ「四月は君の嘘」第3話 春の中 [感想]

四月は君の嘘(1)

 

今期とても気に入っている作品です。原作漫画も読みましたが、アニメーションになっても美しさが変わらなくて、詩的で純文学のような台詞に色が付いてとても魅力的に映る。

 

3話は公生がかをりの伴奏者に指名される話なわけだけれど、コンクール当日になっても公生は動き出すことが出来なくて、学校の屋上でサイドウィッチを食べている。ピアノを弾くことが出来なくなったときから、弾けない理由を考えるようにってから、暗闇の中から出られないでいるし、出ようとしない。そんな公生を光の側へ歩み出させたのは、かをり。コンクール当日、学校の屋上にいた公生は、当然、かをりは諦めただろうと思う。これまで練習していないし当日にもいないのだから、誰か別の人を探しているはずだと。そんな公生を横目にかをりは諦めていないし、屋上まで公生を探しに来てまで説得する。

 

「専門に勉強している人がいるのに、僕なんかが演奏なんか出来ない」

 

ピアノから逃げた自分には演奏する資格がないし、真面目にやっている人に失礼。台詞からは音楽に対して真摯に向き合う姿が見えるし、音楽が好きなんだよね。「今から行っても満足のいく演奏なんて……」と続けるように、本心では音楽をやりたいけれど、何故か出来なくなってしまった自分に自分で失望しているし、また舞台上で出来なくなることが怖い。そんな公生に「君の言うとおり満足のいく演奏はできないかもしれない。でも弾くの」とぶった切る。完璧じゃなくても、弾く。

 

「弾ける機会と聞いてくれる人がいるなら、私は全力で弾く」

 

私は演奏家で、君と同じ。「私をちょっぴり、支えて下さい……くじけそうになる私を、支えて下さい……」間に挿入される、学校の風景、体育館に転がったバスケットボールには日が当たり、暗闇の中に舞い上がっていた桜の花びらは暗闇の中から光の中へと流れていく、(渡の言う通りだ……。無理かどうかは、女の子が教えてくれるさ)公生が一歩踏み出した瞬間ですね。暗闇の中にいた公生を光の中へと連れて行くカットは印象深いです。

 

練習していないし、満足のいく演奏が無理どころか、そもそも弾けないかもしれない。Aパートで「君は掛け替えのない春の中にいる」と言ったように、公生には彼女が輝いて見えたし、灰色で暗闇の中にいる自分とは違うと思っていた。けれど、泣いているかをりを見て、この子も悩むんだと、くじけそうになるんだと。ワッフルを前にして楽しそうにして、子供たちと演奏して楽しそうにして、そんな彼女にも泣いてしまいたいときがあるのだと気づく。それでも彼女は前に進もうとするし、そうたりえるように輝こうとしている。そう考えたときに逃げている自分をやめようと思ったのかもしれませんね。自分と向き合い、過去と向き合い前に進みたいと思ったのかもしれません。だかこそ、Bパート終了での公生の目には、世界が鮮やかに見えたのですね。

 

「僕の住んでいる町は、カラフルに 色付いている」

 

 

四月は君の嘘(2)

四月は君の嘘(2)