Infinity recollection

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ひとつ海のパラスアテナ (2) (電撃文庫) [感想]

ひとつ海のパラスアテナ (2) (電撃文庫)

 

アキはどうしてこうまで不幸なのか。これまでメッセンジャーとして仕事をしてこれたのが不思議なほど不器用を発揮するばかりか、幸運値が極端に少ないのでは?と思わせる苦境への遭遇率に読んでいて戦慄します(恐ろしい子!)。それでも生きることを諦めない、たくさん生きることを心に決めているから行動できるアキの姿がぶれないものだから、不遇で痛々しい状況下に心を痛めつつも応援したくなってしまう。自然と背中を押したくなる愛嬌を持っているのですよね。だからこそ、オルカやタカが慕っているのかもしれませんし、フロートで出会う住民たちとも何だかんだ仲良くやれる理由になっているのかな。

 

さて、冒頭部分から船を奪われるという、一巻の新しい船出は何だったんだ!というか何やってくれてんだよ!成長してないな!と叫びたくなる不器用さと不運ぶりを発揮するアキは、まるでダイジョバナイ。わざとかどうか分からないけれど物語の構成についても一巻と似通っているので流れが変わらないことから、一巻とは何だったのかと感じる人も中にはいるのでしょうが。ダァジョーブ。物語に流れる空気感だったり雰囲気が好きなった身としてはひとつ海の生態系や在り方が読めることが何より面白い。海の謎をメインに読みながら、「デンチュービット」とか「ブリッツリーフ」とか毎回のようにカッコイイネーミングのハイセンスすぎる舞台装置を投入してくる著者の才能に脱帽しっぱなしでした。加えて「ウイテマテ(UITEMATE)」の自己救助法がこの世界では世界標準になってることにちょっと感動。そんな世界に関わってくるアキには愛嬌があると言ったけれど、子供であることを全面に押し出している頼りない感じが憎めないキャラクターに仕上げているし失敗するアキを見ているとイライラじゃなくて頬が緩む感じとでも言うのだろうか。それこそシマさんの親心のような心境になって有耶無耶の内に許しちゃうみたいな。とにかくアキからは元気がもらえるから嫌いじゃない。たまにはアホの子がいたっていいじゃない。

 

終盤でまさかの超展開となるわけですが、これで遺跡探索的な冒険要素にいくのか、考古学的な歴史探検の旅へ繰り出すのか、世界のあり方を覆すような謎が秘められた引き具合だったので三巻が楽しみですね。今度は流石に構成が変わっているでしょうから焼き直しということはないだろうし、海底に何があるのかアキと一緒に見定めたい。

 

ひとつ海のパラスアテナ (2) (電撃文庫)

ひとつ海のパラスアテナ (2) (電撃文庫)