Infinity recollection

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文句の付けようがないラブコメ (ダッシュエックス文庫) [感想]

文句の付けようがないラブコメ (ダッシュエックス文庫)

 

スーパーダッシュ文庫から変わりまして、ダッシュエックス文庫が創刊されました。何だかレーベルが新しく誕生することが多くて、もはやついていけていないので、昔から買っているレーベルさんの本しか買わない今日この頃です。決めてしまうと選ぶの楽ですしね(これが全てかな)。しかしながら、ダッシュエックス文庫は創刊というだけあってラインナップに気合が入っています。元からいたスーパーダッシュ文庫の人気作家陣と人気イラストレイターから、他レーベルでも活躍している実力派作家陣と人気イラストレーター。これらを組み合わせて、創刊月となる11月は万全の布陣と言えるのではないでしょうか。そんな中で、手に取ったのは鈴木大輔氏が描く本作だ。

 

まず目に付いたのは、印象的なその表紙だ。白背景にヒロインだけというのは、従来のライトノベル表紙そのもので代わり映えはしないのだが、椅子に腰掛けて本を手に取るその姿と、対角線上に慎ましやかにタイトルを配置しているレイアウトが何とも美しい。絵としての配置に調和が取れているように感じるので、見ていてとても落ち着くし、頭の中の印象に残った。その美しさは挿絵にも溢れていて、ライトノベルだと片側1ページにイラストを配置する形が多いと思うのだが、本作は珍しく見開き2ページ(表現として合ってる?)でイラストが描かれている。それも章間の挿絵が主なので作風と相まって雰囲気がとてもよく、物語を邪魔せずにイラストが作品を主張してくる。特に妹と主人公が庭で紅茶を飲むイラストは見開きだからこそ出来る構図なので、ちょっとした感嘆を覚えた。

 

作品の中身はタイトルその通りで、「文句の付けようがないラブコメ」だった。ラブコメの中のラブコメ。ラブコメの要素を究極的に古典的に捉えたとすれば、自ずと本作になるのかもしれない。ユウキとセカイが織り成すむずがゆい青春模様というか夫婦生活をニヤニヤしながや眺めていると、根幹となる部分はセカイ系を含んだシリアスな面もあるのでそのギャップに驚かされるはず。そして、二巻への繋げ方は抜群の上手さなのでとても期待が持てる。鈴木大輔氏は「ご愁傷さま二ノ宮くん」しかり、「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」しかり、ラブコメとしてのシチュエーションとキャラクターとの掛け合いや台詞回しが面白い作品を描き出す作家さんだと認識しているが、本作もそこは変わりない。地の文は極力省いて、勢いと甘さがあるので、ラブコメを求めている方は買って損はない。少なくとも、ラブコメを読みたいと思って読んでいたので面白かったですし満足です。しかしながら、地の文は削っているし、心理描写の深さはそこまでないので、読み応えを求める人には向かない。