Infinity recollection

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クズと金貨のクオリディア (ダッシュエックス文庫) [感想]

クズと金貨のクオリディア (ダッシュエックス文庫)

 

別レーベルの作家同士によるコラボ小説なわけだけれど、今回は作家による相性というものを確信させられました。元々、「変態王子と笑わない猫。」にしろ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」にしろ読んだことがある作品なわけだけれど、この二つにはお互いに癖のあるキャラクター達が青春を展開させていく物語という共通点がありました。けれども、前者のさがら総氏が描く作品のキャラクターというものはどこかしら好きになれない印象があり、後者の渡航氏は癖のあるキャラクターを丁寧に料理しているのがいつも好印象でした。故に、申し訳ないけれど変猫は2巻までしか読んでいないですし、逆に俺ガイルは9巻までは読んでいます。(10巻は手元にありますが読めていません。)そんなわけですから、 さがら総氏には苦手意識がありましたので渡航氏のネームバリューで購入したような形になります。それでも苦手意識を覆すことは難しかった。学園ラブコメとか青春活劇を読みに来たら軽くサイコホラーでした。もしくはコメディ。

 

こういう形になってしまうと比較しがちになって自分でも嫌なのですが、やはりどうしてもヒロインが好きになれない。作中で主人公が言及するようにただのサイコパスにしか見えないのです。いくら妹の為なのだろうなと序盤に伏線を張られたところで、文章におこされたキツイ言動が消えるわけではない。また、テーマがテーマだけに金に固執するのはいいのかもしれませんが、少し過激すぎやしないだろうかと疑問符がついて回りました。これは自分が潔癖症なだけなのかもしれませんが不快でした。特にヒロインパートは地の文も少なく会話劇になりがちなので、想像する範囲が狭すぎて顕著です。これらがミステリアスな演出だとすれば完全に失敗ですし、物語の秘密を握っていなければいけない(キャラクター含めて詳しい説明が出来ない)のだとしても好感度があがる余地がないのはどうなのだろう。

逆に主人公には好感が持てます。自らをクズだと卑下しすぎな部分はウザったくも映りますが、そこは地の文での描写を丁寧に挿入することですっきりと見せている。そのまま八幡を彷彿とさせるキャラクター像にはなっているのですが、ここは読者に求められている部分だろうと思うので正解ではないでしょうか。自分を卑下しつつ社会を斜めから切り裂く考え方に、ダークヒーローっぽく格好良さを演出しますが実はただ捻くれてるだけという。しかもかなり真面目。要するにただのぼっちで凄く良い奴なのですよね。個人的に凄く好きなのは244頁、245頁の一連の切り替えしですね。相変わらずの千葉リスペクトに心がオープンセサミ、奇跡も魔法もありました。

 

二人の視点が入れ替わりながら展開していく方式はどうにも読み難かった。出来ることなら渡航の「クズと金貨のクオリディア」が読みたかったのが本音ということになってしまうのだが、物語のオチにしても急展開すぎてついていけない。気づいたらヒロインが裸だったのだから驚きもするだろう。一目惚れ云々言われたところで納得できないのでこれまた首を傾げたくなる。主観と主観がすれ違ってぶつかって、とにかく描きたかった部分が物語としてよく分からなかったが、続くらしい。

 

クズと金貨のクオリディア (ダッシュエックス文庫)

クズと金貨のクオリディア (ダッシュエックス文庫)