とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫) [感想]
とある飛空士への追憶の後日譚。
レヴァーム皇国軍の飛空士である海猫のライバル、ビーグル。天ツ上海軍の撃墜王である千々石武夫を主人公に、中央海戦争の顛末が描かれる。一度は海猫に敗れたビーグルだけれど、もう一度戦うために戦場を翔ける。
物語りは千々石が海猫に負けたところから千々石が幼かった頃の話へと移り、現在の空戦に身を投じる彼が描かれていくのだけれど、映画を見ているように熱い。
貧しくて日々の生活で必死だった千々石が、地下から空へと這い上がって飛んでいく流れは美しい。そんな彼、無口で不器用な千々石を空へと導いたのは間違いなく吉岡ユキで、幼い頃の彼女との思い出が撃墜王にまでなった千々石を形成している。
空戦に取り付かれていく千々石。
幼い頃の約束をお互いに果たした千々石とユキ。再開に至るこそばゆい関係に悶えてしまいますし、その後に待っている切ない恋も素晴らしい。好きなことは分かっているし、好きだけれど、他に好きになれる奴を探せ。突き放すような言葉を投げかける千々石に心が痛みますし、言葉を受け取ったユキにも心が締め付けられる。
やはり空戦とロマンスが魅力だった。
海猫を追い求める千々石はまるで恋しているよう。水守美空の歌声が流れていってしまうのは何とも言えない気分にさせる。一年後、姿を消した海猫とのエース対決が待っていることを予感させつつ、まだまだ終わっていない恋物語がどちらに転ぶのか楽しみで仕方ない。
面白かった。
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- 作者: 犬村小六,森沢晴行
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/07/20
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